沖雅也がドラマ「恋は放課後」で見せつける男の美学。
2025.3.31(月)
若くして「必殺」シリーズや「太陽にほえろ!」シリーズなど、数々の人気作に出演し、将来が嘱望された沖雅也。それだけに1983年に31歳で亡くなった際の衝撃は大きく、芸能界やファンを襲った喪失感は言葉では言い表せないものだった。
そんな沖が残した出演作の1つが「恋は放課後」(1973年)だ。ヒロインに当時売り出し中の松坂慶子を迎えた本作は、美人教師が不良生徒を相手に奮闘するというストーリーとなる。
東京の高校から田舎町への転任を希望した三村靖子(松坂慶子)は西伊豆の港町にある高校に赴任が決まり、任地へと赴く。ところが、その道中で赴任先の生徒たちから海に投げ出されるという手荒い歓迎を受ける。
海で溺れそうになった彼女を助けたのが、沖演じる田所祐吉だ。東京でやくざ者になっていた祐吉は、父親の源治(フランキー堺)が経営する芝居小屋でストリップ興行を打つために町へと帰ってきたところで、生徒たちからは兄貴分として慕われていた。
自らを海に放り投げた生徒たちのクラスを受け持つことになった靖子の新たな教師生活は、初日から執拗に嫌がらせを受けるなど前途多難なスタート。しかし、勝気な靖子はラグビー部を作って生徒たちの更生に乗り出すことを決意する。
■沖が哀愁たっぷりに演じた男の美学
(C)1973松竹株式会社
昭和作品でよく見られる教師と生徒の青春モノとなる本作だが、物語に大きく関わってくるのが、靖子と祐吉の関係性だ。
当初は自身の弟分たちを更生させようとする靖子を煙たがった祐吉だったが、真剣に生徒と向き合う姿を見て心境に変化が訪れる。
ストリップ興行の準備を手伝わせていた生徒たちを学校に戻るように促し、トラブルから関係がこじれた靖子と生徒の間を取り持つ。さらには自らもラグビー部の練習に参加するなど、積極的に靖子に協力していく。
(C)1973松竹株式会社
当初は水と油かと思われたが、ラグビー部の活動を通じて、徐々に惹かれあう靖子と祐吉。しかし、そんな2人の仲は源治の芝居小屋で発生した火災によって引き裂かれることに。
思わぬ別れを迎えることになるが、ここで沖が見せる男の哀愁を表現した演技はさすがの一言。もう二度と会えないことを悟りながら、それでもあえて黙って姿を消す。その1シーンは、現実世界で経験した沖との別れがフラッシュバックさせるとともに、沖の男の美学がまざまざと伝わってくるようだ。
沖の生き様にも通じる本作。もう二度と会うことの叶わない名優への思いを馳せながら楽しんでほしい。
文=安藤康之
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