西野七瀬、『少年と犬』を通して出会った新しい感情とは「自分と強く重なってくる感覚」
2025.3.19(水)

第163回直木賞を受賞し、現在までに累計発行部数50万部を突破している名作『少年と犬』(文春文庫)。原作の複数のエピソードにオリジナル要素を加えた劇場版が3月20日(木祝)に公開される。同作は、大切な人に会うために岩手県釜石から彷徨ってきた1匹の犬"多聞"と人間との絆を描いた物語だ。
本作でW主演を務めるのは高橋文哉と西野七瀬。過去に痛みを抱えた女性・美羽を演じたのが西野である。公式サイトでは「今まで経験したことがない感情になる場面が多かった」とコメントしていた西野は、美羽とどう向き合ったのか。初共演となった高橋の印象や演技への向き合い方などを語ってもらった。
――本作への出演が決まって、まずどのように感じましたか?
「最初にお話をいただいたとき、難しそうだなと思いました。でも同時に面白そうだとも感じていて。できるかどうかは自信がないけど、自分がどこまでできるのか試してみたいという興味が強かったです。過酷な場面も多かったけれど、『やってみたい』と素直に思いました」
――西野さんはこれまでも幅広い役や作品に挑戦してきた印象があります
「自分の中で『できるかな?』と思う方が、よりやりがいを感じるんです。自分でも想像がつかないようなものの方に、自然と惹かれる傾向があります。だからこそ、お芝居を続けられているのかなと思います」
――公式サイトで「今まで経験したことがない感情になる場面が多かった」とコメントされていました。今回、美羽を演じていく中でどのような感情と出会えたのでしょうか?
「美羽が抱えているものがあまりにも重くて、自分自身が実際に同じ経験をしたわけではないのですが、その感情が自分と強く重なってくる感覚がありました。これまでも似たような感情やお芝居の経験はあったはずではあるのですが、今回は特別でそれだけ役をしっかりと生きることができた証なのかなと解釈しています。『自分が美羽だった』という感覚が強く残っています」

――役作りで意識されたことはありますか?
「撮影初日から感情が崩れるシーンだったこともあって、すごく大変でした。まだ美羽という人物像を掴み切れていない状態で、重い感情のシーンに挑むことにすごく不安がありましたし、急に感情を高めなければならなかったので、初日の撮影が終わったときには本当に疲れ切っていたのを覚えています。その後も、生き甲斐も失ってしまった状態で生き続ける中で、多聞と出会い救われていくという経験も自分はしたことがないので、全て想像で表現するしかありませんでした。でも、『難しいな』とか『どうしようかな』と考える時間は好きなので、なんとか乗り越えられました」
――監督からは演出面で何かオーダーはありましたか?
「監督の演出は、すごく感覚的だなと感じていて。そういうときには、『こういうことですか?』と確認すると、『そうそう、そういう感じ!』と返してくださったりしてコミュニケーションを取っていきました。監督から『こういうパターンも見てみたい』と言われることもあったので、とにかく『一回全部やってみます』と答えて、実際にいろいろ試しながら演じていました」
――実際に犬の多聞も登場しますが、撮影中はいかがでしたか?
「わんちゃんの気分次第だったので、どうしても見てほしいところを見てくれなかったりすると、テイクを何度か重ねることもありました。忍耐力が求められる現場でしたが、粘っているとピタッと決めてくれる瞬間があるんです。それがいつ来るかわからないので、みんなでその瞬間を待つことが多かったですね。あとは、実際に遊んでいるシーンがあって、フリスビーを投げると、上手にキャッチして持ってきてくれるんですけど、なかなかフリスビーを離してくれないんです(笑)。そこから引っ張り合いに発展しちゃうこともあって。大型犬なので力も強くて、引っ張られて持っていかれそうになりました(笑)」
――限られた時間で関係を築けたんですね
「そうですね。おやつを持っている人には従順というのを聞いていたので、撮影初期の段階では、まだ現場に慣れていない様子ではあったのですが、おやつ作戦で少しずつ距離を縮めていきました(笑)。日数を重ねるごとに現場にも慣れてくれて、撮影もどんどんやりやすくなっていきました」
――西野さんも犬を飼っていたんですよね
「私が小学校に上がる前にやってきたので、一緒に育ってきた弟みたいな存在で、家族の一員でした。中学生や高校生のときは、家に帰るとすぐにゲージから出してあげて、戯れるのが日課。冬になるとすぐストーブをつけて、その前で一緒に温まっていました。わんこはストーブが大好きで、しばらく動かないんですが、それを隣で見ながら過ごす時間がすごく好きでした」

――今回、初共演となった高橋文哉さんと共演されての印象はいかがでしたか?
「最初は初めましてという感じで、お互いに様子を伺う雰囲気があったのですが、すぐに普通に雑談したり、打ち解けられました。(高橋さんの方が)年下だったのですが、年齢もあまり気にせず自然に接することができましたし、向こうも同じように感じてくれていたのかなと思います。おかげでとてもリラックスして過ごせました」
――西野さんは初共演の方とはすぐ打ち解けられるタイプですか?
「でも、やっぱり最初は様子を見ます(笑)。話しかけられるのが嫌じゃないかなとか、そういうのは少し気にしながら相手を観察していると思います。こちらも無理をせずにお互いが自然体でいられる環境が一番いいなと思っているので、なるべく相手に合わせるようにしています」
――相手の出方を見つつ、お互い良きタイミングで心を開くというか。
「そうですね。頑張ってたくさん喋ろうとはしないです(笑)。無理せず、頑張らない感じで接するのが自分のスタイルです」
――高橋さんとは共演シーンも多かったと思うのですが、お互いの演技に関してコミュニケーション取られましたか?
「動きがある場面については、監督と事前に話して決めることはありましたが、そのやり取りを2人で事前に決めることは特にありませんでした。まずは自然にやってみて、その上で監督が演出の中で少しずつ調整する、という流れが多かったです。美羽と和正の関係性としてもそこまで密接にコミュニケーションを取らなくてもいいと思っていたので、お互い合わせるというよりは、むしろ合ってなくてもいいかなと思っていました」

――西野さんにとって映画主演は『あさひなぐ』以来となります。そこから年齢を重ねるごとに仕事への向き合い方は変化していきましたか?
「7~8年前と比べると、本当に変わったと思います。でも、未だにわからないなと感じることも多くて。お芝居に関しても、『ちゃんとできたことがあるのかな?』とよく思うんです。自分ではその判断がなかなかできなくて、常に不安を抱えながら、毎回作品に臨んでいます。でも、作品を一つひとつ重ねていくごとに、少しずつ視野が広がったり、自分が今何に悩んでいるのかを考えることで、少しずつ成長できているのかな、と思えるようになってきました」
――今まで気づかなかった感情に気づいたりもしましたか?
「こういった取材のときに思います。普段は自分が思ったことを整理して話すことはほとんどないので、取材していただいて初めて自分ってこう思ってたんだ、と確認できるんです」
――では、最後に2025年にチャレンジしたいことを教えてください
「実は最近、畑にちょっと興味が出てきたんです。小さい頃にサツマイモ掘りに参加したことがあるくらいで、収穫の経験はほとんどなくて。なので、大人になった今、改めてそういうことに興味が湧いてきて。収穫だけじゃなくて、何かを植えることにも挑戦してみたい気持ちもあります。何をするかはまだはっきり決まっていないんですけど、自然豊かで綺麗な土のある場所に行けたらいいな。農作物を育てたり、畑にお邪魔させてもらったりする機会があったらなお嬉しいです」
取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
ヘアメイク=猪股真衣子(TRON)
スタイリング=鬼束香奈子
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