「タカ&ユージ」とはまた違う柴田恭兵のもう1つのバディ!若者の苦悩と葛藤を描いた「チ・ン・ピ・ラ」
2023.3.8(水)
映画「竜二」(1983年)の劇場公開中に急逝した金子正次。彼自身が脚本と主演を務めた「竜二」は暴力シーンを伴わないヤクザ映画として高く評価され、後に長渕剛主演で制作されたドラマ「とんぼ」や映画「オルゴール」などに大きな影響を与えたとも言われている。
そんな伝説の映画人である彼が残したアイデアを、「竜二」でもメガホンを取った川島透監督で映画化したのが「チ・ン・ピ・ラ」だ。
本作では東京・渋谷を舞台に、競馬のノミ屋を生業に自由気ままに生きる藤川洋一(柴田恭兵)と梅沢道夫(ジョニー大倉)のチンピラコンビの生き様と苦悩を描いている。
ヤクザにはなりたくないと思う洋一と道夫の2人だったが、仲間が起こした事件をきっかけにヤクザへの勧誘を受けた洋一。兄貴分である道夫を差し置いて自分だけが誘われたことに対して複雑な思いを抱きながらも、チンピラ稼業にけじめをつけヤクザへの道に進むことを決心する。
一方、年齢もあって洋一のようにヤクザ業へと踏み出せないでいる道夫は、チンピラ稼業を続けていく。こうして一度は袂を分かつ2人だったが、洋一が預かっていたドラッグの行方を巡って運命の歯車が動き出していくというのが物語の大筋だ。
洋一を演じる柴田といえば、「あぶない刑事」シリーズの大下勇次に代表されるコミカルに2枚目を演じていく印象が強い。お茶目で格好良いという役柄は柴田のハマリ役といえるが、本作においても自由に生きようとする洋一を演じる上で彼の魅力がいかんなく発揮されている。刑事とチンピラという全く異なる役柄でありながら随所で共通点を感じてしまうのも、こうした演技こそが柴田の真骨頂たる所以だろう。
そんな柴田が作中でガラリと違う演技を見せているのが、恋人との別れに打ちひしがれるというシリアスなシーン。突然の別れに深く傷つく若者の心を言葉ではなく表情、酒やシャワーといったアイテムを使いながら臨場感たっぷりに表現している。凄みすら感じさせるこの演技には、ぜひ注目してほしい。
そして、道夫との友情は本作を語る上で欠かすことのできないポイントだ。物語の佳境で重大な事件を引き起こしてしまった道夫を救うために、自身の命を危険にさらしながらも奔走する洋一。その姿からは2人の友情の深さをうかがい知ることができ、その後に続くクライマックスでは見るものを大きく引き込んでいく。
果たして洋一と道夫を待ち受ける結末とは。「タカ&ユージ」とはまた違う「洋一&道夫」の名バディの行く末をオンエアーで見届けてほしい。
文=安藤康之
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