マッツ・ミケルセンの出世作！デンマーク各地を飛び回り、難事件に挑む刑事たちの姿を描いた「UNIT ONE-特別機動捜査班-」

2025.3.14(金)

マッツ・ミケルセンが出演するデンマークの犯罪ドラマ「UNIT ONE-特別機動捜査班-」がアクションチャンネルで放送される。本作は、デンマークに2002年まで実在した警察チームをモデルに、デンマーク各地の難事件に挑む刑事たちの姿を描いた作品。2000年に放送が始まり、2002年には国際エミー賞の作品賞（ドラマ・シリーズ部門）を受賞するなど高い評価を受けた。

この作品において、若き日のマッツ・ミケルセンが演じるアラン・フィッシャー刑事は、熱血漢でありながら繊細な一面も持つキャラクターとして強烈な印象を残している。彼の演技は単なる刑事ドラマにとどまらず、視聴者を惹きつける重要な要素となっているのだ。フィッシャー刑事は、特別機動捜査班の中でも特に衝動的で直情的な人物として描かれており、規則を厳格に守る上司たちとは異なり、彼はときにルールを無視してでも事件解決を優先する。組織の中では問題児とも見なされるが、正義感が強く、被害者のために全力を尽くす姿勢が視聴者の共感を呼んだ。

ミケルセンはこのキャラクターの激しさと繊細さを見事に演じ分けているのだ。怒りやフラストレーションを爆発させる場面では、鋭い眼光とキレのある動作で観る者を圧倒し、一方で被害者やその家族に寄り添うシーンでは、言葉少なながらも深い感情をにじませる。このコントラストが、フィッシャーというキャラクターを単なる熱血刑事ではなく、人間味のある魅力的な存在にしている。

ミケルセンの演技の特徴として、感情を内に秘めながらも、静かな表情の変化だけで強いメッセージを伝える点が挙げられる。「UNIT ONE」でも、彼は派手なアクションや過剰な演技に頼ることなく、細やかな仕草や視線の動きだけでキャラクターの心情を表現している。特に仲間との対立や、捜査の行き詰まりによって葛藤するシーンでは、ミケルセンの緻密な演技が光る。

また、彼のダンサーとしての経歴のおかげでフィッシャーの肉体的な躍動感がすさまじい。犯人を追い詰めるアクションシーンでは、身体の動きが極めて自然でありながらダイナミックであり、刑事としてのリアリティを生み出している。こうした身体性と繊細な感情表現のバランスが、本作におけるミケルセンの演技の魅力をより際立たせている。

ミケルセンと言えば、「ハンニバル」のハンニバル・レクター、「007 カジノ・ロワイヤル」のル・シッフル、「ドクター・ストレンジ」のカエシリウスといった悪役の印象が強い。これらの作品では、彼は冷酷かつ知的なヴィランを演じ、その圧倒的な存在感で観客を魅了した。しかし、「UNIT ONE」でのフィッシャー刑事は、これらの役柄とは大きく異なる。フィッシャーは、感情を抑えるのではなく、むしろ激情を露わにするキャラクターだ。彼は理知的に犯罪を操るのではなく、現場に飛び込み、泥臭く真実を追い求める刑事。このような熱血漢の役柄を演じるミケルセンは珍しいし、その点において「UNIT ONE」は彼のキャリアの中で特異な位置を占める作品と言えるだろう。

「UNIT ONE」は、ミケルセンの国際的な知名度が上がる前の作品であり、デンマーク国内では彼のキャリアの礎となった重要な作品である。本作はデンマーク国内で大ヒットし、視聴者数は170万人を記録し、この成功が彼のその後の国際的なキャリアへと繋がる第一歩となった。後に彼は「偽りなき者」や「プッシャー」シリーズといった作品で演技の評価を高め、ハリウッド作品へと進出していく。しかし、「UNIT ONE」のフィッシャー刑事は、ミケルセンの初期キャリアの中でも特に魅力的なキャラクターであり、彼の演技力を堪能できる作品として今なお評価が高い。

本作は単なる犯罪捜査ドラマではなく、チームの人間関係や、それぞれの刑事が抱える葛藤にも焦点を当てた作品である。特にフィッシャー刑事のキャラクターは、視聴者に強い印象を残す存在だ。彼がどのように感情を爆発させ、どのように人間臭い刑事を演じるのか。その演技の妙を堪能できること間違いなしだ。北欧ドラマの持つ独特の雰囲気と、ミケルセンの迫真の演技が融合した彼のキャリアの原点とも言えるこの作品を、ぜひ一度観てほしい。

文＝川崎龍也

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