アン・ハサウェイが狂気性をはらませる...ロマンティックコメディ映画「ブルックリンでオペラを」
2025.3.13(木)

人生何が起こるかわからない。
当たり前のことなのだが、そんな常識を小気味よいテンポで教えてくれるのが映画「ブルックリンでオペラを」だ。
ニューヨークで幸せに暮らす夫婦。夫は著名な現代オペラ作曲家スティーブン(ピーター・ディンクレイジ)、妻はその精神科医パトリシア(アン・ハサウェイ)。スティーブンは5年前から1曲も書けないというスランプに陥り、妻兼主治医の勧めもあり、愛犬とともに散歩へと送り出される。そこで曳き船の船長カトリーナ(マリサ・トメイ)と出会い、物語は一気に加速していく。

(C) 2023. AI Film Entertainment LLC. All Rights Reserved.
スティーブンとカトリーナは船の中で関係を持ってしまい、スティーブンはその経験から一気に新作を書き上げる。オペラは大いに称賛されるが、元々恋愛依存症のカトリーナがつきまとうように。さらには、診断のためパトリシアの元に向かい、スティーブンとカトリーナの関係は露見してしまうのであった。
奇妙な三角関係と、スティーブンの息子ジュリアン(エヴァン・エリソン)と彼女のテレザ(ハーロウ・ジェーン)の恋愛関係が同時並行で進行。恋をしている若者の眩しい姿が中年にも影響を与え、スティーブンとパトリシア、そしてカトリーナの関係も新たな局面を迎える。
映画としてはスティーブン視点で見せ、後半は息子ジュリアンとテレザを襲う予想外の事象がメインとなる。そのため、アン・ハサウェイ演じるパトリシアの出番は限定的だ。それでも、彼女はしっかりとした存在感を放ってくるのだからさすがである。
パトリシアは病的な潔癖症。掃除に魂を捧げるかのように動き、ルールを破れば夫であるスティーブンも叱責する。そんな狂気性もはらんだ女性は作り物のように美しいアン・ハサウェイだからこそより際立つ。彼女の表情や言葉から徐々に「この人おかしいかもしれない」という感情がグラデーション的に濃くなっていき、やがて前半に見せていたジュリアンの良い母という印象からは程遠い、何か少し歯車が狂っていった女性を完璧に表現してみせる。

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思えばアン・ハサウェイは劇中での変化で魅せてきたかもしれない。彼女の代表作である「プラダを着た悪魔」では鬼編集長のアシスタントとしてたくましく成長していく姿を熱演。頼もしい右腕となった彼女に憧れ、ニューヨークに恋い焦がれた人は多いのではないだろうか。
ロバート・デ・ニーロと共演した「マイ・インターン」にしても、部下となった70歳の男性との交流を経て、考えを変えていくやり手の女社長を表現。立場こそ違えど社会という生活の中で前に進んでいく女性を演じたアン・ハサウェイの印象は非常に強いものだった。
一方、「ブルックリンでオペラを」のパトリシアに訪れる"変化" は一味違ったものだ。完璧であるが故に暴走気味になる彼女を、アン・ハサウェイはユーモアを交えて見事に演じている。そんなパトリシアの人生の選択にも、ぜひ最後まで注目してほしい。
「ロマンティックコメディ」という名にふさわしく、笑えて少しほっこりできるストーリー。2世代の恋が進行しながら、大団円を迎えていくラストは美しい。映画としては短めな102分の上演時間だが、確かなストーリーとオペラ曲の良さ、アン・ハサウェイの演じっぷりもあり、しっかりとした満足感を与える作品となっている。
文=まっつ
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