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歴代の名優たちにもひけをとらない真田広之演じる「坂本龍馬」が絶品!

2025.2.28(金)

アメリカドラマ界最高の栄誉とされる「エミー賞」で最多受賞記録を打ち立てた「SHOGUN 将軍」。その成功の立役者となったのが、同作で主演・プロデューサーを務めた真田広之である。アメリカ作品においてリアルな戦国時代の描写を実現できたのは、彼の奮闘と知見による功績が絶大だ。2003年の「ラストサムライ」への出演を機に活動拠点をハリウッドに移行した真田は、「ラッシュアワー3」(2007年)、「ライフ」(2017年)、「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019年)などの話題作に続々と出演し、活躍は目覚ましい。

爽やかさがある坂本龍馬を演じた真田広之
爽やかさがある坂本龍馬を演じた真田広之

(C)東映

そんな真田広之がかつて主演し、1989年にTBS系で放送された大型時代劇特別企画「坂本龍馬」をご紹介したい。本作は当時29歳の真田が坂本龍馬役で主演し、龍馬が江戸での剣術修行中に起こった黒船来航騒動の時期からの生涯を描いている。桂小五郎との出会いと勝海舟への私淑、海軍伝習所を経て海援隊を結成。さらに薩長連合成立に奔走し、大政奉還に導いた幕末の激動を生き抜いた龍馬の痛快な活躍を壮大なスケールで描き出した。

1853年、浦賀沖に四隻の黒船が現れて江戸市中が騒然としているころ、坂本龍馬(真田広之)は浦賀水道の崖から軍艦隊を目の当たりにして衝撃を受ける。同郷の友・武市半平太(三浦友和)から、「今こそ尊皇攘夷のために行動すべきだ」と誘いをかけられた龍馬だったが、「土佐が外国に一番近いところだ」と、謎の理由で江戸を後にし、土佐へ向かう。やがて、武市を中心にして、勤皇倒幕を目指す"土佐勤皇党"が結成された。中岡慎太郎(美木良介)ともに血判を押す龍馬。しかし、龍馬には一人の藩の重職を殺したところで、日本の情勢が変わるとは思えなかった。彼の目は、桂浜から太平洋、世界を見つめていたからだ...。

過去に坂本龍馬を演じた俳優は数多く、古くは1968年のNHK大河ドラマ「竜馬がゆく」の北大路欣也、同じく1974年の大河「勝海舟」では藤岡弘が演じて評判を呼んだ。以降も佐藤浩市(1990年・「翔ぶが如く」)、江口洋介(2004年・「新選組!」)、玉木宏(2008年・「篤姫」)と、錚々たる顔ぶれ。ただ、大河ドラマで最も印象深いのは、やはり2010年の「龍馬伝」で主演した福山雅治だろう。従来は豪放磊落で男臭い龍馬像が描かれることが多かったが、繊細さを感じさせる福山の起用は、幼少期は泣き虫であり、弱かった龍馬が後に成長していく過程を丁寧に描き出し、史実の龍馬にも近いのではと評価された。

(C)東映

さて、真田が演じる龍馬だが、爽やかさと躍動感が全開で、歴代の龍馬役たちと比べてもまさにはまり役と言える。もともとアクションはお手の物なので、殺陣は抜群。身のこなしの美しさに惚れ惚れするほど。史実上でも龍馬は剣術の達人であり、むしろコンプレックスの塊だった龍馬少年が、剣との出会いから自信を得て成長の糧とした逸話からも、真田が演じる龍馬は説得力がある。特に前半で、竹中直人演ずる岡田以蔵と龍馬が酒場で対峙する場面が印象深い。勢いのある以蔵が派手に刀を振り回すものの、龍馬が極めて美しい刀捌きを見せてくれて以蔵をいなしていく。このシーンひとつとっても、時代劇における真田の力量にうならされることだろう。

共演陣には、妻のお龍役に名取裕子、西郷隆盛役に松方弘樹が起用され、幼少期の龍馬に強い影響を与える姉の乙女をかたせ梨乃が演じている。ほかに十朱幸代、若山富三郎、滝田栄、勝野洋ら豪華キャストが集結。さらに財前直見、竹中直人らも顔を見せ、ナレーターは渡辺謙が務めている。中島貞夫監督は、TBS系大型時代劇の常連で、前作の「織田信長」(主演・渡辺謙)や後年の「武田信玄」(主演・役所広司)、「天下を獲った男 豊臣秀吉」(主演・柳葉敏郎)でも監督を務めた。ちなみに真田は「信長」では徳川家康役、「秀吉」でも浅井長政という重要な役どころを演じており、中島監督のお気に入りだったことが伺える。

大作とは言え、単発ドラマだったことで後年に語り継がれることが少なかった本作「坂本龍馬」だが、真田広之の龍馬は本当に素晴らしく、歴代の名優たちに負けていない。もっと評価されていいと思わせるほどだ。そんな真田の見事な演技と圧倒的な殺陣の美しさを改めて堪能してほしい。

文=渡辺敏樹

放送情報【スカパー!】

【時代劇特集】大型時代劇特別企画「坂本龍馬」
放送日時: 3月1日(土)8:00~
チャンネル: TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ

※放送スケジュールは変更になる場合があります