若かりし玉置浩二が怪演!単なるホラーにとどまらない映画「プルシアンブルーの肖像」
2025.2.24(月)
シンガーソングライターであり、ロック・バンド『安全地帯』のボーカリストでもある玉置浩二。66歳となったいまなお、日本を代表するミュージシャンの一人だが、過去には俳優としても積極的に活動していた。
俳優キャリア初出演作品となったのが映画「プルシアンブルーの肖像」。一般的にホラー作品とジャンル分けされているが、内容を端的に説明するのは少々骨が折れる。
小学校が舞台となり、いじめられっ子の桐島冬花(高橋かおり)が主人公。現代の作品ではなかなか描きづらくなったでSあろう、陰湿ないじめをしっかりと受けており、どことなく時代背景も感じさせる。
(C)キティフィルム
そして、玉置浩二は用務員の萩原秋人役だが、秋人には知られざる過去がある。15年前に校内で起きた級友の事故死が原因で失語症となり、現在に至るまで喋ることができない。また、冬花に何か特別な感情も抱いている様子をうかがわせる。
さらには、冬花が梅本春彦(長尾豪二郎)と少しずつ距離を縮める一方、建て替え予定で閉鎖されている旧校舎でいじめっ子の一人が行方不明になったり、教師の深見先生(村上弘明)が生徒の日記を盗み読むなどの変態的な一面を見せたり、様々な角度からおどろおどろしい雰囲気を全面に押し出してくる。
そんな中でも際立つのが玉置演じる秋人の不気味さだ。小学校の用務員でありながら、失語症で喋ることもなく、表情にも乏しい。どう考えても児童に恐怖を与える存在で、無精髭を生やしているビジュアル的にも「気持ち悪い」といって差し支えない。なぜ小学校で働くことを許されているのだろうと考えてしまうほどだ。
それでも、冬花を守るような動きを見せ、実はいい人だったのかと一瞬思いそうになるのだが、そう話は単純なわけでもない。実は、秋人は「タダシ」との二重人格で、もうひとつの人格である「タダシ」が大人になって顔をのぞかせ、一気に冬花に襲いかかるのだった。
(C)キティフィルム
そこからは本格的なホラー展開となるのだが、前後半で玉置の怖さの種類が変わってくるのがポイントのひとつ。序盤は喋らない人間という不気味さを醸し出し、後半は特殊メイクを使用して外見的に怪物としての恐怖をもたらす。
しかも、秋人というキャラクターは単なる恐怖の対象には収まらない。怪物のような姿のまま「秋人」と「タダシ」の間に揺れ、菊井カズミ(磯崎亜紀子)の前で自身の心のうちを漏らすのだった。「カズミさんのことが好きです」と告白するシーンは、ホラー作品の中で一線を画し、また異なる味わいを与えてくれる。「僕にはもう一人の自分がいる。だが、それを知られたらきっと嫌われてしまうと思った」という言葉は共感こそ難しいが、一種の哀愁を感じ、切なさも禁じ得ない。
秋人がカズミとの過去に決着をつける一方で、冬花と春彦が旧校舎から脱出するシーンも見逃せない。子供たちが自分たちだけで窮地を切り抜け、未来へ向けてその先の別れと向き合うことにも小さくない意味がありそうだ。直接的に言葉で想いが通じ合うわけではないのに、胸にずっしりと伝わってくるものがある。
作品全体として、当時は、売り出し中のアーティストである玉置浩二が特殊メイクを行ったことでも注目を集めたようだが、外見だけに注目して鑑賞すると本質を見失ってしまいそうだ。怪物的な見た目で怪演する中でも、秋人には過去という名のドラマがあり、そこから目を背けてはならない。
若かりし玉置浩二がどのような演技を見せているのか。軽い気持ちで見ると、思わぬ驚きを得ることができるかもしれない。
文=まっつ
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