元宙組トップスター・真風涼帆が様々な姿を見せる「白鷺の城」('18年宙組・宝塚)
2025.1.7(火)
「白鷺の城」は、45分の舞台とは思えぬほど密度が濃い作品だ。作・演出は大野拓史。2025年の年明けを飾る宙組公演「宝塚110年の恋のうた」の作・演出も手がけている。本作にも日本物を得意とする大野らしいこだわりが詰まっており、ただ見るだけでも華やかで楽しいが、深掘りするとさらに面白い。
このショーには一本筋の通ったストーリーが織り込まれている。狐の化身である「玉藻前」と、狐の血を引く陰陽師との時空を超えた恋物語である。男は殷の紂王・吉備真備・安倍泰成・栗林義長・幸徳井友景など様々な人物に転生していくが、常に玉藻前を追い求めている。その恋は、古代中国から日本の平安時代、戦国時代、江戸時代へと続いていく。
トップスター・真風涼帆が平安時代の公達、中国の皇帝、戦国時代の武将、そして江戸時代の粋な若者と、転生するたびに異なるいでたちで登場する。タカラヅカの日本物で見たい男役スターの姿がすべて拝める美味しいショーともいえそうだ。
玉藻前は鳥羽上皇の寵姫だったとされるが、その正体は九尾の狐であり、かつては古代中国の殷の紂王を籠絡した傾国の美女・妲己であったとか、陰陽師・安部泰成によって殺生石に封じ込められたといった「玉藻前伝説」で知られる。この魔性の女性をトップ娘役・星風まどかが妖しく美しく、健気に演じる。
第三景は安倍泰成(真風)の祖先である安倍晴明にまつわる物語だ。葛の葉(専科・松本悠里)は狐の化身であり、安倍保名(愛月ひかる)と結ばれて生まれた子どもが安倍晴明であるといわれる。この話は文楽や歌舞伎の「蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)」でおなじみだ。
第五景は戦国時代だ。狐の血を引く軍師、栗林義長(真風)が主君の岡見宗治(芹香斗亜)とともに出陣するが、宿命の女性との恋が叶わぬと悟って討死する。
第六景では殺生石に封じ込められていた玉藻前が蘇り、白鷺城の天守閣に現れるが、宮本無三四(桜木みなと)が刺してしまう。そこに白鷺城の主である富姫(松本悠里)が現れ、時空を超えた二人の愛を成就させるのに一役買うこととなる。この富姫も、泉鏡花の「天守物語」の登場人物としておなじみだ。
タカラヅカの日本物レビューにはバラエティーショー形式の「見取り」とストーリー性を有する「舞踊詩」の二つの形式があるという(プログラムの大野氏寄稿を参照)。「見取りは変化に富むがまとまりに欠け、舞踊詩はストーリーを織り込むことで深みが出るが変化に乏しい」と、それそれに一長一短がある。
だが、この作品では舞踊詩的なストーリーを基本に据えつつ見取り的な変化を持たせ、双方の良いところ取りを狙っている。スピード感を求める現代の観客の期待にも応えられる新たな日本物レビューの創生を目指した作品である。
文=中本千晶
放送情報【スカパー!】
白鷺の城('18年宙組・宝塚)
放送日時:1月12日(日)14:00~
放送チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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