松下洸平の気迫に満ちた体当たりの熱演も...息子を想う気持ちを切々と訴える富田靖子の長セリフに心揺さぶられる渾身の2人舞台「母と暮せば」
2024.12.17(火)

吉永小百合と二宮和也を主演に迎え、名匠・山田洋次監督が製作した映画でも広く知られる「母と暮せば」。"ヒロシマ"が舞台の戯曲「父と暮せば」(1994年初演)を生み、その対になる作品を残す...という劇作家・井上ひさしの構想を受け継ぎ、現・こまつ座代表の井上麻矢が企画し、山田洋次監督がメガホンをとった"ナガサキ"の物語だ。
2018年には山田監督の監修、栗山民也の演出のもと、こまつ座公演「母と暮せば」として初演。2021年の再演、2024年の再々演と、同じキャストやスタッフが集結して繰り返し上演されている。

撮影:宮川舞子
井上ひさしが「生涯をかけて書かなければいけない題材」としていた"ヒロシマ""オキナワ""ナガサキ"の「戦後"命"の三部作」。「母と暮せば」は長崎で被爆した母・伸子の前に、3年前に原爆で死んだはずの息子・浩二が亡霊となって現れるという物語で、映画版にオリジナルの要素も加えた舞台版では、伸子役を富田靖子、浩二役を松下洸平が演じている。
■【インタビュー】富田靖子と松下洸平が追求する「母と息子のリアリティ」...3度目の共演となった名作舞台「母と暮せば」の裏話から透けてみえる、互いへの格別な信頼関係

撮影:福岡諒祠

撮影:福岡諒祠
息子を想う気持ちが痛いほど胸に沁みる富田の演技は、渾身の長ゼリフが圧巻だ。清らかさと少女っぽさを宿した母親像を見せつつ、辛い胸の内を明かすシーンは鬼気迫る表情と説得力のある語り口に引き込まれる。

撮影:福岡諒祠
「戦後"命"の三部作」の第二弾となるこまつ座の舞台「木の上の軍隊」でも新兵役で確かな演技力を発揮した松下は、浩二が亡霊として母の前に現れてから緩急に富んだ魂の芝居で魅了する。冒頭、舞台上に姿を見せた浩二は生きていた当時と変わらない素朴な青年像で伸子と会話をし、明るく笑い、穏やかな"あの頃の風景"を作り上げる。
しかし、映画では描かれなかった"原爆で身体が焼け亡くなるとき"を浩二が話し始めると場の空気が一変。熱線を浴び「熱か!熱か!」ともだえて苦しむシーンは見る者の心を何度もえぐるように刺す。

撮影:福岡諒祠

撮影:福岡諒祠
同場面は「被爆した瞬間の身体が燃えていく演技に迫力があった」と高い評価を得て、初演時には第26回読売演劇大賞・優秀男優賞と杉村春子賞、平成30年度(第73回)文化庁芸術祭演劇部門・関東参加公演の部 新人賞をトリプル受賞した。

撮影:福岡諒祠
待望の再々演となる2024年版(12月29日(金)に衛星劇場にてTV初放送)は、3度目だからこその2人の自然な呼吸はもちろん、より進化した芝居のリアリティや深みに引き込まれること必至。長崎の坂の上に住む母と一人息子の物語が、笑って泣いて、どうしようもなく心揺さぶられる約90分を届けてくれる。初演の幕が開いて6年。より円熟味を増した"2人芝居"を貴重な映像で堪能したい。
文=川倉由起子
放送情報【スカパー!】
こまつ座「母と暮せば」
2018年版
放送日時:2024年12月29日(日)14:30~
2021年版
放送日時:2024年12月29日(日)16:00~
2024年版
放送日時:2024年12月29日(日)17:30~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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