エネルギッシュかつ繊細!田中圭の演技力に引き込まれる舞台「僕だってヒーローになりたかった」
2024.12.10(火)
コメディーからシリアスまで、抜群の演技力で映画、ドラマ、舞台と幅広い活躍を続ける俳優・田中圭。そんな彼のために、2017年に作・演出を務める鈴木おさむが書き下ろした作品が12月26日(木)に日本映画専門チャンネルで放送される「僕だってヒーローになりたかった」だ。本作は鈴木が田中をイメージして当て書きしたという"ヒーローになりたかったのになれなかった男"・正義の人生を描いたおかしくも悲しい物語で、"みんなが誰かのヒーローなんだ"という熱いメッセージが込められている。
さまざまな挫折をエネルギーに変え、経営者として成功した正義は、運命の女性・真子(真野恵里菜)とも結ばれ、幸せいっぱいの日々。しかし、幸せはそう長くは続かなかった。ある日、突然、正義の会社はあらぬ盗用疑惑をかけられ、あっけなく倒産。多額の借金を背負い、正義は不幸のどん底へと突き落とされてしまう。そんな折、政府高官の甲本(手塚とおる)が現れ、正義に日本を恐怖に陥れる悪役を演じるようにと持ち掛ける。妻と生まれてくる子供との幸せを取り戻すため、正義は一世一代の悪役を引き受けることに。
鉄骨のみのシンプルなセット。登場人物もアンサンブルを除けば、田中、真野、松下優也、手塚の4人のみ。それでいて、とてつもない熱量を発している本作。それは、脚本・演出の面白さはもちろんのこと、やはり田中をはじめとした役者たちの技量があってこそだろう。

冒頭、役名を叫びながらコミカルに登場した田中は、小中正義というキャラクターの半生をほぼ一人語りで伝えていく。圧倒されるのは、その台詞量。膨大な長台詞を、ものすごいスピードで田中は放ち続けていく。声、表情、そして体をめいっぱい使い、怒ったり笑ったり、悔しがったり、喜んだり...。感情に素直な正義を、情熱的に演じるさまは圧巻で、常に全力を尽くす正義というキャラクターにあっという間に魅了されていた。後輩に嫉妬したり、言い訳を重ねたりと、器の小ささが露呈するようなシーンもあるのだが、それさえも田中が演じると愛らしく感じられるから不思議だ。まるで、田中圭の魅力を詰め込んだショータイム。田中の演技力を初っ端から、存分に浴びることができ、心が震えた。そして、驚くべきことに、このスピードとエネルギーはラストまで変わることはない。
幸せの絶頂から転落し、悪役になることを決めた正義の胸の内、そして愛すべき妻への想いなど、正義の心の機微を丁寧に演じ切った田中。パワフルでエネルギッシュでありながらも繊細でリアルな田中の芝居は、見る者の心を捉えて離さない。どんな役も田中が演じると、見事なまでにキャラクターに命が吹き込まれるのだ。描かれていない人生が見えるという表現が適切かは分からないが、田中の芝居を通してキャラクターが立体的に浮かび上がり、まるでこれまでの時間を共にしてきたかのように、確かな温度を持った存在となる。だからこそ、われわれは彼の発する台詞に、一つ一つの表情にこんなにも胸を打たれるのだろう。
現在放送中のドラマ「わたしの宝物」(フジテレビ系)では、托卵される夫役で話題を集めている田中。さらに12月6日(金)には出演映画「劇場版ドクターX FINAL」が、12月27日(金)には映画「私にふさわしいホテル」の公開も控えており、その活躍はとどまることを知らない。今や日本を代表する俳優の一人となった田中の、役者としての底力をたっぷりと感じられる本作。彼のファンのみならずとも、是非チェックしてほしい一作だ。
さらに、日本映画専門チャンネルでは映画「私にふさわしいホテル」の公開を記念して、田中圭の出演作特集を放送。映画で共演するのん、滝藤賢一と語り合う特別鼎談番組も、12月23日(月)、24日(火)にお届けする。あわせてお楽しみいただきたい。
文=鳥取えり
放送情報【スカパー!】
僕だってヒーローになりたかった(舞台)
放送日時:12月26日(金)20:30~
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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