「ライオンの隠れ家」への出演で話題の岡山天音が見せる狂気的な演技!共演の仲野太賀、菅田将暉の引き立ても完璧な映画「笑いのカイブツ」
2024.11.29(金)
テレビを観ていると各方面の一流と呼ばれる人達が出演していることがある。そうした何かにのめり込む人々が他人に「変わっている」と言われているのを観たことがある人は多いのではないだろうか。もしかしたら、言われた方は苦しんでいるのかもしれない。「笑いのカイブツ」はそんな才能と情熱と世間にもがく男の話だ。
(C)2023「笑いのカイブツ」製作委員会
この話は伝説のハガキ職人と呼ばれたツチヤタカユキの私小説を映画化した作品。ツチヤはとにかく不器用な人間で社会に馴染めない学生だった。そんなツチヤの生きがいは大喜利番組にネタを提供することで「5秒に1回」と自分にルールを課しながら生活すること6年、実力が認められ劇場で作家見習いになることに成功する。しかし、周囲になじめず劇場を去ることになったツチヤは笑いを諦めきれず「ハガキ職人」として再起。すると尊敬する芸人・西村から声がかかり上京するが、そこには様々な壁が存在した。
■執念の芝居をみせた岡山天音
(C)2023「笑いのカイブツ」製作委員会
主人公のツチヤを演じるのは岡山天音。お芝居はもう圧巻の一言だ。インタビューで芝居の最中「死相が出ている」と言われたと語る岡山だが本当にそう感じるほど岡山の劇中でのツチヤへの重なり具合は狂気的だった。例えばツチヤは文字通り毎秒お笑いを追求しているが、その分人とのコミュニケーションが異常に苦手だ。しかし、その分感情が発散された時の振り幅も非常に激しい。岡山は激しい感情を伝える時に、子供のように怒鳴りながら身体を震わす芝居をした。その怒鳴り方は四方に放出するというより、怒鳴っても尚大きすぎるエネルギーを身体の内側で抑えているようにみえる。その芝居に全く違和感がなく、ピタリとツチヤという像にはまっているのは流石の一言だ。
■活かす芝居を的確に演じる実力派たち仲野太賀・菅田将暉
岡山の周りを固める役者も豪華だ。特に西寺を演じた仲野太賀と物語中の異色キャラクターであるピンクを演じた菅田将暉は、2人とも主演をはれる力があるからこそ、岡山の芝居を存分に活かしていた。仲野は頼れる先輩として、ツチヤに寄り添いその才能を何とかしてやろうとする兄貴分として作中でどっしりと構えており、その芝居があるからこそ不安定なツチヤを繊細に演じる岡山の芝居が際立つ。
菅田は本当にカメレオンである。ピンクは掴みどころのないキャラクターでつまりは、演じる側も相当苦労する役ということだ。けれど菅田は「これでしょ?」といった感じであっさり提示する。ツチヤはピンクにはかなり気を許していたが、視聴者はきっとその理由が菅田の芝居によって肌でわかるだろう。
ツチヤを演じる岡山を観て、全く理解できない人もいれば、痛いほど理解できる人もいる。だが少しでも引っかかれば、その棘はきっとあなたの心に深く刺さるだろう。そんな魔法のような作品だ。
文=田中諒
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