杉咲花が高い演技力で注目を集め、女優としてのターニングポイントとなった映画「湯を沸かすほどの熱い愛」
2024.10.3(木)
映画「市子」(2023年)や主演ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」(2024年、フジテレビ系)で圧倒的な演技力を見せている杉咲花。子役から活躍していた彼女だが、女優として花咲いたのは、日本アカデミー賞ほか各映画賞の助演女優賞を受賞した「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年)と言っても過言ではないだろう。
(C)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会
1年前に夫・一浩(オダギリジョー)が突然家出したため娘と2人暮らしの双葉(宮沢りえ)は、突然、余命2カ月と宣告を受ける。彼女は絶対にやっておくべきこととして、家出した夫を連れて帰り家業の銭湯を再開させ、いじめられて不登校寸前の娘・安澄(杉咲)を立ち直らせて、ある人に会わせるために動き出す。探偵の滝本(駿河太郎)に一浩を探してもらうように依頼すると、すぐに発見。しかし彼は鮎子(伊東蒼)という愛人の子どもと2人暮らしをしていた。双葉は鮎子も引き取り、一つの家族として暮らし始める。
宮沢りえ演じる双葉の深い愛が描かれた本作は、涙なしでは見られない名作。一見シリアスな物語に見えるが、双葉がポジティブでユーモアたっぷりの女性のためしんみりとした雰囲気は漂わないのが本作の最大の魅力といえる。
宮沢りえは、本作で第40回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ各賞を席巻。彼女の演技力の高さが再び注目を浴びた。また同時に、娘・安澄を演じた杉咲花の演技も話題に。宮沢同様、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞や新人俳優賞など国内の多くの映画賞を受賞した。
(C)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会
ブルーリボン賞の授賞式で、クランクイン前に中野量太監督から「宮沢りえさんと家族になってほしい」と言われていたことを明かした杉咲。毎日メールをしてプライベートでも"お母ちゃん"と呼ぶなど、芝居を超えた関係性を作っていったという。実際に映画を見ても、もう一人の娘である鮎子を演じた伊東を含めた3人は、どこから見ても家族そのもので演じているという雰囲気が漂っていない。そのナチュラルさこそがこの作品に没入できる大きなカギとなっている。
安澄は母親といるときは普通の高校生だが、制服を隠したりするいじめっ子の前では自分の思ったことが言えない内気な性格。その母親と学校での表情の違いや声のトーンなどを杉咲は絶妙に表現している。特に、母親と話すときの少し甘えているような柔らかさがある声と、学校での自分をガードするような少し固い声は全く異なっていて、その表現力の豊かさに驚かされる。また泣くシーンも圧巻で、感情が高まって心が動いていく様が手に取るように分かる。学校に行かないと母親に訴えるときや自分にまつわる過去を知ったとき、双葉の命がそう長くないと感じ取ったとき...など全く違う涙に驚いた人も多いだろう。
節々に杉咲の高い演技力が垣間見られる本作だが、公開時の彼女は19歳。「この映画は自分にとってずっと忘れられない作品になりました。これからそのすべての経験を次につないでいけるように頑張ります」と授賞式で語った彼女は、その後、ドラマや映画で圧倒的な存在感を放つ唯一無二な俳優に。彼女にとって大きなターニングポイントなった「湯を沸かすほどの熱い愛」の見事な演技を堪能してほしい。
文=玉置晴子
放送情報【スカパー!】>
湯を沸かすほどの熱い愛
放送日時:10月9日(水)16:50~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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