ブレイク中の若手俳優・萩原利久が静と動の繊細な演技を見せたドラマ「めぐる未来」
2024.9.20(金)
大ヒットシリーズ「キングダム 運命の炎」(2023年)に公開中の最新作「キングダム 大将軍の帰還」(2024年)、映画「ミステリと言う勿れ」(2023年)と、話題作への起用が相次いでいる萩原利久。子役から活動を始め、「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(2019年)や連続テレビ小説「エール」(2020年)など数々の作品に出演し、着実にキャリアを重ねてきた。2021年には、八木勇征と共にW主演を務めたドラマ「美しい彼」が深夜ドラマにもかかわらず国内外で高く評価され、大ブレイク。今気になる若手俳優の1人として注目を集めている。
⒞辻やもり/芳文社/ytv
そんな萩原が主演を務めたドラマが「めぐる未来」(2024年)だ。本作は、辻やもりによる同名コミックスを原作とするサスペンス。「"過去に戻る病"を抱える主人公が過去へと戻り、謎の死を遂げた妻の死の真相に迫っていく」という考察型のストーリーも好評を博した。
⒞辻やもり/芳文社/ytv
萩原は主人公の襷未来を演じた。未来は、父からの遺伝で原因不明の"過去に戻る病"を抱えている。感情の起伏が激しくなると自分の意思とは無関係に過去に戻ってしまうという病気ゆえに、幼い頃から感情を表に出さないよう心掛け、他人と関わらない孤独な生活を送っていた。そんな彼を孤独や苦しみから救ってくれた女性・めぐると出会い、結婚。病気のことは秘密にしながらも幸せな日々を過ごしていたが、2人の結婚記念日に彼女が職場の非常階段から転落死したという知らせが入る。深い悲しみの中で未来は病を発症し、気が付くとめぐるが生きている時間へと戻っていた。自らを犠牲にしてでも最愛の妻を救いたいと一途な愛を貫き、何度も過去に戻って最悪の結末を止めようと奮闘する男を萩原が熱演。穏やかな声とクールな表情で淡々と静かに日常を送る様子に、秘密を抱えて孤独に生きてきた人物像が見えてくる。早見あかり演じる明るく無邪気な妻めぐるとの対比も際立つ。そんな妻へ向ける優しい眼差しに深い愛情を感じさせ、瞬きや視線一つにも緊張や戸惑いが伝わる。予想もしていなかった悲劇に感情を爆発させ、妻を救うために奔走する未来。タイムリープを繰り返しながら、少しずつ人間らしく変化していく。萩原が心の機微も丁寧に表現し、未来という1人の男を形作る。ブレイクのきっかけとなった「美しい彼」もそうだが、豊かな心を内に秘めた陰のあるキャラクターは萩原のハマり役だ。
⒞辻やもり/芳文社/ytv
夫婦の未来を巡り、希望と絶望を繰り返す新感覚のタイムリープサスペンス。過去をやり直し書き換えることで、新たな悲劇と予想外の展開が生まれる。自分の意思では制御できない"発症型"のタイムリープで、未来はめぐるを救うことができるのか。リアリティのある萩原の演技が、現実ではあり得ない複雑な設定のドラマを成立させた。過去へ戻り孤独な闘いを始める難役に扮し、静と動の繊細な演技を見せた萩原。彼が今、注目される理由がよく分かった。
文=中川菜都美
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