阿部寛が、加賀恭一郎としての集大成を感じさせる映画「祈りの幕が下りる時」
2024.9.17(火)
映画は時にヒットしたドラマが映画版として再編集、もしくは完全新作の物語として制作される。最近では「ラストマイル」という複数のドラマの世界線を共有した新たな映画作品が公開された。今回はそんな人気ドラマの映画化シリーズから、日本映画専門チャンネルで10月13日(日)
■「新参者」シリーズ
東野圭吾の「加賀恭一郎」シリーズを原作としたドラマ「新参者」。主人公の刑事・加賀恭一郎役を務めた阿部寛の好演が反響を呼び、連続ドラマが終了した後も2作のスペシャルドラマと2本の映画が制作された人気シリーズだ。「祈りの幕が下りる時」はシリーズの完結編となる2作目の映画化作品で加賀恭一郎の過去から現在までをぐるりと取り囲むようなストーリーになっている。
加賀は頭の回転が早い。それはシリーズ通して変わらないことでいつも鋭い推理をみせてくれる。その中で特徴的なのが「犯人の動機と心情」まで想像力を働かせることだ。今回の「祈りの幕が下りる時」でもその共感ともいえる能力を発揮し犯人逮捕への着想を得ている。また親子関係に悩む描写も多く、他作品に登場するような天才的捜査をする人物よりもかなり人間的で、そういった点が感動を呼んでいる。
■加賀恭一郎としての阿部寛、その集大成。

特に本作でのキーワードになるのが「親子」だ。物語はある死体の話から複雑に絡み合い「親子」という宿命に辿り着く。捜査官としての冷静な視点を求められる中で、自分自身と向き合い苦悩する加賀の姿を、阿部は芝居で絶妙に表現している。

苦悩の面では加賀の両親の話が主だが、どんなに私的に苦しい展開になろうとも捜査官としての加賀は基本的に理知的で論理的な推理を展開していく。10年分を超える写真の中からルーペ1つで特定の人物を探したり、ベテランながら1人で地方まで足を運んだりと事件解決へ奔走する情熱的な姿は、ただただ素敵だ。だからこそ時折覗く感情的な加賀に観客は心を惹かれる。ラストの手紙を読むシーンには加賀を演じた阿部の歳月が詰まっているように見えた。そしてその場面でもセリフはない。阿部が伝える加賀の佇まいと表情がセリフの代わりだ。その空間には16年間母の秘密を追ってきた加賀と、最初に加賀を演じてから8年の月日が流れた阿部が綺麗に重なるような集大成としての姿があったように思う。
他にもこの作品では個性的な俳優が顔を並べる。特に松嶋菜々子と小日向文世は物語の根幹を担う立ち位置で、この2人がいるからこそ阿部の姿がより感情的に映る。是非、この3人の俳優のハーモニーを堪能しながら完結作となる物語を楽しんで欲しい。
文=田中諒
放送情報【スカパー!】
祈りの幕が下りる時
放送日時:10月13日(日)21:00~
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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