二階堂ふみが苦悩を声に込めた演技を見せ、長谷川博己との禁断の恋に落ちる映画「この国の空」
2024.8.31(土)
映画において戦争というのは大きな一つのテーマだ。その中でも第2次世界大戦時の日本にスポットを当てた作品が邦画では多く、最近では「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」が記憶に新しい。今回はそんな第2次世界大戦時の日本を舞台とした「この国の空」を紹介する。
■戦時中の日本という題材
(C)2015「この国の空」製作委員会
「この国の空」は1945年の東京で母と暮らす19歳の田口里子(二階堂ふみ)が隣家に住む38歳の銀行員であり妻子持ちの市毛猛男(長谷川博己)と恋に落ちてしまう様子を描いた作品だ。
端的に書いてしまうと内容が薄く感じるかもしれない。しかし、戦時中というのがこの作品に厚みを持たせる。田口は19歳で本来であれば嫁ぐはずの女であったが、戦時中で若い男がおらず、嫁ぐことはなく母と二人三脚で暮らしている。暮らしぶりは戦時中にしては悪くはなく3食食べることが出来ていた。市毛は兵役の義務を免れており、いつ自分も招集されるかという恐れを抱きつつも生活はしっかりと成り立って家ではヴァイオリンを嗜む余裕もある。
両者共に戦争中にもかかわらず、多少の恋愛を出来る余裕があるのだ。それとは対照的に戦地や空爆の激しかった地域では多数の死人が出ている。それは実際に市毛が見た死体の話であったり、ラジオ・新聞で里子をはじめとする人々のニュースを確認したりする姿からも他の場所での被害はある程度想像出来るように描写されており、だからこそ妻子持ちという垣根を越えて時代背景的にも禁断の恋なのだ。
■二階堂ふみの作り出す緻密な世界観とは
(C)2015「この国の空」製作委員会
とはいっても里子は19歳、情動によく揺れ動く若者である。そんな時代的苦悩と情動的苦悩に揺れる姿を二階堂ふみはまるで当時を生きていたかのように提示する。その中でも印象的なのが「声」だ。この作品で里子は時々歌を口ずさむ。また、最後にはエンドロールと共に詩を詠む。内容に意味があるのは確かだが、その時代と若さに翻弄される悲壮感がありつつもどこか女としての芯を感じるその声が作品に彩りを与えている。
勿論、声以外の芝居も注目すべきだ。里子は劇中で市毛に想いを募らせ、母から「女」になってきたと言われる。この「女」には様々な意味が込められていることは2人が河原で話す場面をみればわかり、それは色恋や結婚といった色欲的側面を含んでいる。二階堂の芝居を観ていると徐々に市毛をみる目や振る舞いが何処か熱っぽいことがよくわかるのだ。それは情熱的に相手を求めるということよりも身体全体から出される気のようなもので、これは是非、本編を観て感じてみて欲しい。
文=田中諒
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