眞栄田郷敦の「空気を読めるキャラクターづくり」が共感を呼ぶドラマ「366日」
2024.8.30(金)

Z世代の若手俳優の中でも、近ごろ活躍が目覚ましい眞栄田郷敦。最新の主演映画「ブルーピリオド」では油絵で東京芸術大学を目指す高校生を熱演し、ますます評価を高めている。現在24歳だが、同作では高校生を演じた。そしてドラマ「366日」でも高校生からアラサーのサラリーマンまでの時代を演じ、実年齢からプラスマイナス5歳ぐらいの幅広い役に挑戦。どの作品でも役柄の年齢にナチュラルになりきっている。その演技力は確かなものだ。

9月にフジテレビTWOで放送される「366日」は、2024年4月クールに放送されたばかりの新作ドラマ。主演は広瀬アリスで、広瀬演じる雪平明日香と眞栄田演じる水野遥斗が、茨城県の高校で同級生として過ごすうちにお互いのことを好きになるが、ちょっとしたすれ違いがあって結ばれず、社会人となって再会してからのストーリーを描く。ラブバラードとして長く愛されているHYの「366日」をモチーフに清水友佳子が脚本を書いた王道の恋愛ドラマだ。

明日香と遥斗は、同級生たちから見てもキラキラしているお似合いの美男美女なのに、ふたりとも不器用すぎるので、なかなか結ばれない。それがじれったく、もどかしい。大学が離れて疎遠になった後、明日香は音楽教室の事務員として働き、遥斗は外食チェーンで店舗の企画を担当していたが、再会してようやくお互いの気持ちを確かめ合う。しかし、初デートでスカイツリーに行くことになった日、遥斗は通りすがりの子どもをかばって川沿いの道から転落。頭を打って意識を失い、目を覚ましたものの記憶障害が残り、明日香とのことを思い出せなくなってしまう。

果たして遥斗の記憶は戻るのか。そして、戻らなかった場合、12年間の長い"両片思い"から卒業し、晴れて交際することになっていた明日香との関係はどうなってしまうのか。そんな不安要素でいっぱいの状況でも、ふたりを取り巻く同級生や家族、職場の人々はみんな、いい人で、優しさ成分しかないのが救いだ。
記憶をなくしても誠実に生きようとする遥斗の心情を、眞栄田は繊細に演じている。弱音を吐きそうになってそれをグッと飲み込む時や、言いたいことを口にできない時の揺れる表情で、見る人を共感させる。きっと普段私たちも、空気を読んで、自分の気持ちを抑えていることが多いからだろう。
よく知られているように、眞栄田はアクション・スター、千葉真一の次男であり、兄は俳優の新田真剣佑だ。兄弟はどちらも高身長で目ヂカラのあるイケメンだが、その違いは、「打たれ弱い」キャラクターが似合うかどうかにあると思う。

「ブルーピリオド」や「366日」で眞栄田が演じた役は、成績が学年10位以内だったり野球部で活躍したりと、スクールカーストでは上の方。ただ、努力家タイプで天才ではない。ゆえに、有頂天になることはないし、自分の限界を思い知って傷つくこともある。それでも周囲の人を気遣い、空気を読んで耐える。そんな時に眞栄田が見せるほろ苦い表情はとてもリアルで、挫折を知る普通の人として生きる私たちの共感を呼ぶのだ。つまり平凡な人間を演じてもリアリティがある。兄の新田真剣佑が映画「ちはやふる」シリーズなどで天才的なキャラクターを演じているのとは対照的だ。

見た目は濃いめのイケメンでインパクトがありつつ、どこにでもいる普通の人を演じられるのは、俳優として大きな強み。若かりし頃の織田裕二に近い立ち位置にいるようにも見える。そんな眞栄田が今後どこまでブレイクするのか楽しみだ。
文=小田慶子
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