大人のお姉さんを演じる広瀬すずの芝居に時の流れを感じさせる、映画「水は海に向かって流れる」
2024.8.21(水)
2013年に15歳で俳優デビューした広瀬すず。当時は明るく愛らしい笑顔が似合う役柄が多かったが、2023年公開の映画「水は海に向かって流れる」では、過去に味わった悲しい出来事により「私一生恋愛なんてしない」と終始不機嫌な"大人の女性"を演じ実力を見せつけた。
■まったく笑わない広瀬の演技
明るく元気な広瀬のイメージを大きく変えたのが、2016年公開の映画「怒り」。本作で事件に巻き込まれ心も体も傷つけられる少女・小宮山泉を演じ、広瀬の"陰"の魅力を存分に見せつけた。その後も、映画「三度目の殺人」(2017年)、ドラマ「anone」(2018年)、映画「いのちの停車場」(2021年)、映画「流浪の月」(2022年)などで、どこか幸せになれない女性を好演していたが、2023年公開の映画「水は海に向かって流れる」では、母親がダブル不倫の末、家を出て行ってしまったことで「恋愛なんてしない」と、どこか世の中を諦め、冷めた表情を見せる榊千紗を演じた。
26歳のOL千紗は過去の出来事を封印し、心を平穏に保とうと日々を過ごす。しかしそんななか、母の不倫相手となった男性の高校生の息子・直達(大西利空)が千紗の下宿先にやってきた。余計な感情を使いたくない千紗は、ほぼ無感情で直道に接する。理由が分からない直達は戸惑いを隠せないが、千紗はお構いなしで塩対応を続ける。
物語前半、広瀬はまったく笑わない。かといって怒りもしない。唯一笑顔を見せるのは、直達が拾ってきた捨て猫に向かって「君は幸せになれよ」と言ったシーンのみ。ある意味で能面のようで人間味がない。そんな千紗が、実は自身と同じ境遇である直達の心を理解していくことで、関係性が変化し、自身の心もほぐれていくさまが、物語の一つの見どころだ。
■"大人広瀬"を堪能!
(C)2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 (C)田島列島/講談社
そんな千紗の心をほぐしていくのが大西演じる高校生の直達。千紗とは10歳程度違うが、どんどん千紗に惹かれていく。その思いを大人のお姉さんという立場でいなしていく千紗を演じる広瀬はとても新鮮だ。陰のある役はこれまでも演じてきたが、どちらかというと妹的なキャラが多く、今回のように年下から言い寄られる広瀬はあまり見たことがない。
しかも直達のことが好きな同じクラスの美少女・楓(當真あみ)から詰められた際「自分の恋愛がうまくいかないのを、人のせいにする女にはなるな」と言う姿は、"大人広瀬"が垣間見られる。少し前までは、當真が演じた楓のような立ち位置の役を演じることが多かった広瀬。時の流れを感じさせられるシーンだった。
劇中、終始"大人広瀬"が堪能できるからこそ、心が少しずつほぐれてきてから見せる"無邪気さ"がより際立つ。海で直達にドロップキックをする千紗の姿は、長い間感情を押し殺していただけに破壊力がある。
余談だが、2024年1月期のTBS日曜劇場「さよならマエストロ 〜父と私のアパッシオナート〜」で大西と當真は共演している。どちらも瑞々しくかつしっかりと感情を表現できる演技を見せており、今後の活躍が大いに期待できる若手俳優だ。
文=磯部正和
放送情報【スカパー!】
水は海に向かって流れる
放送日時:9月13日(金)21:00~ほか
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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