ニュース王国

宮沢りえが複雑な演技で、人生の歯車が狂い追い詰められていく主人公を体現!池松壮亮、大島優子共演「紙の月」

2024.8.13(火)

宮沢りえが主演を務め、第38回アカデミー賞で最優秀主演女優賞を獲得したクライムサスペンス「紙の月」。

原田知世主演でドラマ化もされたことがある同作の原作は直木賞作家・角田光代の同名小説。映画版のメガホンを取ったのは「桐島、部活やめるってよ」などで知られる吉田大八だ。

宮沢りえが主演を務めた「紙の月」
宮沢りえが主演を務めた「紙の月」

(C)2014「紙の月」製作委員会

宮沢が演じているのは温厚な夫(田辺誠一)と暮らし、わかば銀行で契約社員として働いている主人公・梅澤梨花。一見、何不自由ない生活をしている主人公が、営業で裕福な老人・平林(石橋蓮司)の家を訪ねたことをきっかけに人生の歯車が狂いだし、顧客のお金に手をつけてしまうというストーリーだ。

撮影当時、40代になったばかりの宮沢は、活動の軸が舞台だった時期。本作が7年ぶりの主演映画となった。恋愛も絡んだ銀行員の横領はリアルゆえ、だからこそ難しい題材だが、作品の中にグッと入り込んで見られるのは監督の手腕とキャスト陣の演技力のおかげだろう。

夫にも銀行にも従順だった主人公のタガが外れていく様子を見事に演じきった宮沢はもちろん、梨花を挑発する銀行員の窓口係を演じた大島優子も、梨花を監視しているようなベテランの先輩を演じた小林聡美も、視聴者をハラハラさせる演技で惹きつけていく。そして梨花が足を踏み外すきっかけとなった大学生を演じたのは、ドラマ「季節のない街」や「海のはじまり」など引く手あまたの池松壮亮。宮沢と絡む俳優陣の演技も見応えたっぷりである。

■銀行のロッカーで繰り広げられる宮沢と大島のやりとりにドキドキ

(C)2014「紙の月」製作委員会

人はいいが鈍感な夫に、カチンときても言いたいことを呑み込んでしまう性格の梨花(宮沢)。そんな梨花が顧客の平林に誘惑され、危ういところを止めてくれたのが平林の孫・光太(池松)だった。その後、偶然、駅で再会した梨花と光太は、年の差も忘れて本能的な恋に堕ちる。美人だが装いは地味だった梨花は、光太と会うために仕事終わりのロッカーで派手な口紅を塗るようになり、ショーウインドウを見て、真っ白なコートを購入。その変化に気づき、忠告してくるのがちゃっかりした性格の同僚・相川(大島)だ。隠れて不正を働くようになった梨花に気付いているかのように、梨花の雰囲気が変わったことを指摘し、顔を近付けて「毎日、お金触ってると変になりそう」と挑発してくるシーンは小悪魔的。

一方、学費が払えない苦学生の光太は、本心では何を考えているのかわからない雰囲気を醸し出していて、池松の持ち味を活かした役柄といえる。光太の前ではセレブ妻を装い、これまで抑えてきた欲望を解き放っていく梨花は、罪を犯しているとは思えない笑顔を見せる。鬱屈していた女性が輝いていくさまを表現した宮沢の複雑な演技に釘付けになる。

■宮沢と小林の演技バトルに思わず息を呑む

勤続25年でこの道一筋といった堅物な雰囲気を醸し出す隅(小林)は、梨花や相川の仕事ぶりを観察し、教育係的側面を持つポジションだ。梨花が徐々に追い詰められていく中、横断歩道の前でフリーズしている梨花に後ろから隅が「渡るの?渡らないの?」と声をかけるだけで、サスペンス感がアップする。自由やお金について2人が人生観を語りあう場面では、映画のタイトルを想起させるセリフやお互いが見せる表情に意外性があり、宮沢と小林が人間くさい演技で観る者を圧倒する。

先の読めないストーリーはどんなエンディングを迎えるのか、宮沢を始めとする俳優陣の演技に注目しながら見届けてほしい。

文=山本弘子

放送情報【スカパー!】

紙の月
放送日時:2024年8月23日(金)18:45~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます