大スター・松田優作と薬師丸ひろ子が共演し、対照的な演技を見せた映画「探偵物語」
2024.7.26(金)
演技のみならず、生き様そのものが伝説となったスター・松田優作とアイドル時代からヒット映画に出演し、いまも存在感を放ち続ける薬師丸ひろ子。この二人が共演し、多くの人の心に残っている映画が「探偵物語」だ。公開される前にドラマ「探偵物語」のコミカルな松田優作がマネされるほどの人気作となったが、同タイトルながら映画は赤川次郎原作で内容は別モノ。監督は根岸吉太郎で公開当時のキャッチコピーは「尾行ひとつ満足にできないのかしら、ドジな探偵さん」。アクション、ハードボイルドなイメージが強い松田がどうにも頼りない探偵を演じたことでも話題になり、配給収入が28億円のヒット作となった。
(C)KADOKAWA 1983
一方の薬師丸ひろ子も「野性の証明」、「セーラー服と機関銃」と既にヒット映画のヒロインであり、人気歌手なので、まさに大スターの共演である。本作で薬師丸が演じているのは1週間後にアメリカ行きを控えている女子大生でお嬢様の新井直美。やんちゃで無鉄砲な直美の行動を監視するよう依頼された探偵・辻山秀一を松田が演じている。同じサークルに所属している男子に誘われ、バイクで海に行ったりと青春真っ只中の直美は何をしでかすかわからない性格ゆえにあとをつける辻山はひたすらウザがられている。カリスマ、松田優作が出ているのだから、ヒロインを超絶アクションで救い出すシーンが出てくるかと思いきや、事件に巻き込まれても闘うというより、むしろ終始、戸惑っている役柄なのが面白い。1980年代前半当時は想像の斜め上をいくキャスティングだったのではないだろうか。
■怖いモノ知らずのヒロインと巻き込まれ型の心優しき探偵
(C)KADOKAWA 1983
夜遅く帰ってきて2階によじのぼり、住み込みの家政婦・長谷沼(岸田今日子)に叱られている直美は怖いモノ知らずのアクティブ女子大生。辻山に尾行されていることに気づき、いきなり走り出したり、電車に飛び乗ったりとわざと読めない行動に出て手を焼かせている。大学の送別会につきそい、友人たちにおじさん探偵呼ばわりされ、イジられる辻山は直美にチークダンスを踊る人がいないとお願いされ、二人で踊ることに。このあと、お嬢様を無事に家まで送り届けたと思いきや、直美が信じられない行動に出るのだが、翻弄されっぱなしの不器用な探偵を演じる松田優作と「ホントに1週間後にアメリカに行けるのか?」と思うぐらい無茶な行動に出るヒロインを演じる薬師丸ひろ子の対比が予想を裏切ってくれる。
■殺人事件に巻き込まれたことで、ヒロインの探偵魂に火がつく?
清純派アイドルの薬師丸ひろ子が出演しているにも関わらず、ラブホテルやヤクザ、ちょっとエロい場面が出てくることでも本作は話題になった。お嬢様を守るミッションのもと行動していたはずの辻山が、元妻が絡んだ事件に巻き込まれてしまうからなのだが、辻山が心配で放っておけない直美はホテルの一室で起こった殺人事件の謎を解明すべく、ヤクザの葬儀にひとりで出かけたり、ラブホテルに潜入したりと、辻山にはもはや止められない行動レベルへと突入していく。負けん気の強さと女のコらしいチャーミングな表情も見せる薬師丸はキラキラ感最強の演技。一方、直美の真っ直ぐな気持ちに気づきながら年齢の違いや優しさゆえに困惑し、煮え切らない男を演じきった松田もパブリックイメージを覆す新鮮さだ。そんな二人のエンディングシーンも当時、多くの観客、ファンに強烈なインパクトを与えた。
文=山本弘子
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