寺脇康文がボディガードのプロフェッショナルをクールに熱く好演！ 柏原収史、染谷将太らも同僚役で脇を固めた「守護神・ボディーガード 進藤輝」

2024.7.24(水)

テレビ朝日系の「相棒」シリーズでの亀山薫役がおなじみの俳優・寺脇康文。2008年に「相棒」をシリーズ7途中で卒業した後は、おもに２時間ドラマで精力的に活動していた。2012年から2015年までTBS系で全4作が放送された「守護神・ボディーガード 進藤輝」はそんな時期の代表作のひとつで、同局の「月曜ゴールデン」枠の人気コンテンツである。

寺脇演じる主人公の進藤輝は、民間警備会社「パーフェクト・プライベート・ガード」(略称:PPG)の一員で、ボディーガードのプロフェッショナル。元警視庁捜査一課の敏腕刑事だったが、現在は同じく警察出身で警視庁副総監だった服部敬一(伊東四朗)が経営するPPGに勤務している。同僚は、真壁尚史(柏原収史)、長久保吉乃(平田薫)、山本勇弥(染谷将太)のほか、デスクとしておもに調査担当の和田漠(小倉久寛)という面々。進藤輝(寺脇康文)を中心に、腕利きのボディーガードたちが戦術を駆使して命がけで依頼人を守るのだが、恐ろしい事件に巻き込まれるという設定だ。

シリーズ第一弾では、知らない男に誘拐されかけたという小学生の南颯太(伊澤柾樹)とその母・七海(原沙知絵)がPPGへ相談に訪れる。七海は、借金が理由で離婚した元夫・祐介(趙珉和)を疑う。だが、少年は犯人のことを頑としてしゃべろうとしない。

社長の服部(伊東)の号令で、進藤たちは少年の手厚い警護を開始。その網をすり抜けるように、颯太少年には危険が迫り、放火騒ぎや新たな誘拐未遂などが続々と発生する。PPGメンバーの尽力で、間一髪のところで颯太を救うことはできたが、放火犯と目された女性と、誘拐未遂を起こした男が相次いで死体で発見された。新宿南署の坂口(梨本謙次郎)からの情報で、一連の殺人事件には麻薬密売組織が絡んで、颯太少年を狙われるのも事件に関連していると直感した進藤の緊張感が高まっていく。

本作の魅力は、ボディーガードという設定を生かし、命を賭して少年と母親を守る熱い心を抑制した演技で表現する寺脇の素晴らしさにある。相棒の亀山役をはじめ、激情的な演技を得意とする寺脇だが、本作では気持ちこそ熱いものの極めて抑えた演技に終始。子供相手でも常に丁寧語で冷静に話し、部下を激しく叱咤する際も言葉遣いは丁寧なのだ。実は辛い過去を背負っていることが物語の中盤で明かされるが、七海を相手に過去を打ち明ける場面では、感情を抑えて深い悲しみを乗り越えている主人公の心情が痛いほど伝わってくる。寺脇の俳優としての深みが見てとれるいいシーンだ。

親子の愛情もストーリーの肝となっているが、颯太を演じる子役の伊澤柾樹の演技が胸を打つ。普段はクールで強い男を演じることが多い趙珉和のダメ父ぶりもハマっており、原沙知絵も健気に愛情を注ぐ薄幸な母親を好演。親子3人の存在が、ハードな展開のサスペンスにあって、非常にハートウォーミングなアクセントを与えてくれる。

辛い過去を背負いつつ、強さと優しさで職務にあたるボディーガード役を寺脇が好演する「守護神・ボディーガード 進藤輝」。深みのある演技に加えて、洗練されたアクションも楽しむことができ、脚本の友澤晃一は倉本聰の門下生だけに、心温まるストーリーにも引き込まれていく。寺脇ファンならずとも、高い完成度を誇る2時間ドラマとしても堪能できる作品だ。

文＝渡辺敏樹

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