激動の時期の沢田研二が稀代の色男・光源氏を演じた特別企画「源氏物語」
2023.3.3(金)
映画「土を喰らう十二ヵ月」の演技が高く評価され、「2022年 第96回キネマ旬報ベストテン」主演男優賞を受賞した沢田研二。6月25日にさいたまスーパーアリーナで開催されるツアーファイナルでもある75才のバースディライブにはザ・タイガース時代のメンバー・瞳みのる、森本太郎、そして岸部一徳がゲスト出演するなど、精力的な活動を行っている。

ザ ・タイガース時代からジュリーこと沢田研二のの人気は突出していたが、ソロになってからの沢田研二はスーパースターの名を欲しいままにする存在だった。女性たちのみならず、男性からも憧れられたのは誰にも真似できないことを次々とやってのける先鋭的なシンガーであり、圧倒的なカリスマ性を放っていたからだろう。新曲がリリースされるたびに楽曲、衣装、メイク、パフォーマンスに熱い視線が注がれた。カッコをつけても媚びたところがない色気、艶やかなボーカルなど、その魅力を挙げればキリがない。ザ・ドリフターズの番組「8時だョ!全員集合」でコントを披露して爆笑させても、映画に出演してもそのスター性は少しも損なわれることがなく、生活感が全く見えない存在であり続けた。
そんなジュリーが光源氏を演じ、1980年に特別企画ドラマとして放映されたのが「源氏物語」だ。
■稀代の色男を憂いのある表情で演じるジュリーに吸い寄せられる

「源氏物語」の脚本を手掛けたのは向田邦子で、演出は久世光彦。「時間ですよ」や「寺内貫太郎一家」などのホームドラマをヒットさせた伝説のコンビだ。ジュリー演じる光源氏が艶やかで美しいのはもちろんだが、取り巻く8人の女性たちに八千草薫、十朱幸代、いしだあゆみ、倍賞美津子、藤真利子、風吹ジュン、叶和貴子、渡辺美佐子が起用されているのも豪華。
平安時代に紫式部によって執筆された日本最古の長編小説の中から「紫の物語」をベースに現代的な演出を混じえて映像化した物語となっている。
実の母である桐壺更衣を3才の時に亡くした源氏の切なさは母の面影を追い求めてしまうところだろう。父である帝が母の生き写しの藤壺を女御として迎えたため(桐壺と藤壺は八千草が2役で演じている)、妻に葵の上(十朱)が定められていても源氏は藤壺への想いを抑えることができない。まさに禁断の愛。その感情を藤壺にぶつける官能的なシーンは数々の女性を悩殺してきたジュリーならではの目線も相まって美しすぎる光源氏を生み出した。苛立ちをぶつけるエキセントリックな演技やコミカルな場面など多面的な魅力に溢れている。なお、本作が放映された前後には映画「太陽を盗んだ男」や「魔界転生」が劇場公開され、歌手と俳優業を両立。自身が作曲したミドルバラード「渚のラブレター」やサイコビリー調の「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」がリリースされ、新たなバンド、EXOTICSが結成された年のドラマでもあり、翌年にはザ・タイガースが瞳みのるを除くメンバーで再結成。激動の時期にあったジュリーが映し出された作品ともいえるかもしれない。
豪華なスタッフとキャストによる名作時代劇、そして男の艶を感じさせる沢田研二の魅力を、ぜひこの作品で味わっていただきたい。
文=山本弘子
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