農業コンサルタントの一面を持つ永島敏行、その原点とも言える「遠雷」で生々しい演技を披露!
2024.7.21(日)
俳優として活躍する一方で、農業コンサルタントとして米作りや、日本各地での農業の可能性を模索するという活動も行っている永島敏行。そんな彼が、トマト農園を営む若手農業家役として主演を務める映画が、1981年公開の「遠雷」だ。
本作は、1980年に刊行された立松和平による小説を脚本・荒井晴彦、根岸吉太郎監督で映画化。栃木県の都市近郊でトマト栽培を営む主人公・和田満夫が、家族とのしがらみによる閉塞感漂う自身の境遇や、23歳という若さからくるリビドーの昇華など、悶々とした境遇にもがきながら日々を過ごしていく姿を描く。
永島演じる満夫は、父がほかに女を作り、兄は銀行員として東京に出ていき、母、祖母との3人暮らし。両親が営む農家を継ぎ、ビニールハウスによるトマト栽培を生業にしている。
昼夜トマトの栽培に向き合うなか、満夫の環境は非常に閉塞感でいっぱいだ。幼なじみの親友・広次(ジョニー大倉)とは、飲みに行く間柄だが、スナックのママ・カエデ(横山リエ)を取り合い、満夫が男女の仲になってしまいギクシャクした関係に。さらに満夫のお見合い相手としてやってきたあや子(石田えり)とは、初対面ながらモーテルに直行するも、現代的な軽さはなく、どこか退廃的な雰囲気が漂う。今年新札が発行され1000円札は北里柴三郎に変更されたが、劇中に登場するのは伊藤博文。音楽はレコードで聴き、風俗店などの重々しい雰囲気は、逆に新鮮に映る。
(C)1981 日活/東宝
劇中、満夫にとってメインの居場所となるのが、トマトが栽培されているビニールハウスだ。ここで生きていくよりどころとなるトマトを栽培しつつ、カエデやあや子と情事を行うという、聖域であり欲にまみれた場所という対比が非常に生々しい。
永島と言えば、1977年に映画「ドカベン」でデビュー以来、50年近くも俳優として数々の映画やドラマに出演している大ベテランだが、一方で農業コンサルタントとしての活動も目を引く。インタビュー等で、農業従事へのきっかけは1993年の「秋田十文字映画祭」への参加により米作りを始めたと語っているが、そこから10年以上も前の本作で、広次の田植えの手伝いを含め、農家の人間を演じているというのは、不思議な縁を感じる。
永島演じる満夫の周囲を取り巻くキャラクターも、息が詰まるような"狭さ"を抱えながら日々を過ごしている"リアル"がにじみ出ている。お見合い相手のあや子を演じるのは石田えり。本作で石田は日本アカデミー賞主演女優賞と新人俳優賞を受賞している。この年、同じく新人俳優賞を受賞したのが、佐藤浩市、真田広之、中井貴一というメンバーというのも、いま改めていま振り返ってみると、すごい時代だったと感じさせる。
満夫の親友・広次役のジョニー大倉、満夫の兄・哲夫役の森本レオ、カエデの夫・蟹江敬三、満夫の父役のケーシー高峰など、シリアスな物語でありながら、どこかコミカルさを味付ける名演も、本作の魅力と言えるだろう。
文=磯部正和
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