深川麻衣が乃木坂46卒業後、自然体で演じる俳優へ...井浦新との共演映画「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」はその成長が感じられる一作
2024.7.20(土)
WOWOWで8月2日(金)に放送される、映画「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」(2023年)は、元SDN48メンバーの大木亜希子による実録小説を原作とし、タイトルそのままに、元アイドルが行き詰まって見ず知らずのおじさんと同居を始める物語だ。2019年に刊行された原作は話題を呼び、「つんドル」の愛称で2021年にはマンガ化もされた人気作。本作では大木自身を投影した主人公・安希子役を元乃木坂46メンバーでもあった深川麻衣が、同居人のおじさん・ササポンを井浦新が演じている。
グループアイドルとして活動していたものの「卒業」し、ウェブコンテンツ企業にライターとして勤めていた安希子は、ある日出勤途中に足が動かなくなり欠勤。3ヶ月後、朝起きられない体質になり退職する。無職で意中の男性にも振られ、貯金も底をついた頃に「あんたは誰かと住んだほうがいい」という女友だちのすすめで、ルームシェア相手を探しているという56歳のサラリーマン、ササポンのもとに転がり込むことになる。
安希子は承認欲求が強く、成功欲も深い。退職後はフリーライターという肩書きを掲げたものの「まだ何者にもなれていない自分」にいら立ち、結婚が打開策になると信じて無闇に婚活を行う。どう考えても「詰んだ」と自覚があるのに、心療内科では強がって問題ないようなそぶりを見せてしまう。こんな今どき女子の安希子を演じるのに、深川麻衣が見事なハマり役になっている。
(C)2023映画「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」製作委員会
深川は2016年に乃木坂46卒業後、まもなく映画初出演にして初主演した映画「パンとバスと2度目のハツコイ」(2018年)で、第10回TAMA映画賞の最優秀新進女優賞を受賞する。初主演作で自然な演技を追求する今泉力哉監督と出会ったのは、彼女にとって幸福だったようで、以来同監督の「愛がなんだ」(2019年)をはじめ、どの作品でも過剰に「芝居」をし過ぎない、等身大の女性を自然体で演じる稀有な俳優に成長してきた。
本作では、友人の結婚が決まって「般若の形相」になる表情、好きな男性に夢中になっている乙女の表情、ササポンと出会って早々「私、結婚相手見つけてすぐ出ていくんで」と強がる表情、どれも痛々しいのに、かわいらしく、いとおしい。(元)アイドルだって、普通の女の子なんだ...そんな当たり前のことを見ている者に気付かせてくれる。
(C)2023映画「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」製作委員会
物語の前半で安希子はいびつな引きつった笑顔ばかり見せているが、ササポンとの暮らしが始まり、徐々に穏やかに微笑むようになっていく。ササポンは安希子を適度な距離感で優しく見守り、時に慰め、時に励まし、諭してくれる。とかく彼女を性的に消費してきた世の「オッサン」に対する安希子の先入観を次第にときほぐしていってくれるのだ。
毛布みたいに温かいこのササポンのキャラクターは、演じた井浦によるところが大きい。こちらの配役は深川と異なり、イメージとは正反対。いつも「イケオジの権化」のような井浦が、おしゃれなスターオーラを全消しにして、丸めた背中&丸メガネで家事や畑仕事を淡々とこなす自立したおじさんをまさかの好演で魅せる。「演じたことがない役柄なので、ワクワクした」と本人も語る通り予想を裏切る配役で、新境地を拓いた感すらある。
2人の関係は、人間関係が希薄になった現代においても、立場の全く異なる者同士がいたわり合うこと、助け合うことが、社会のセーフティーネットになることを暗示している。本作を観たら、ササポンみたいな同居人が私もほしい!という独身女性が続出してしまうのではないだろうか。
文=magbug
放送情報【スカパー!】
「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」
放送日時: 8月2日(金)21:00~
チャンネル: WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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