松山ケンイチの繊細な表情から読み取れる、勝てないボクサーの心情。悲しげに佇む木村文乃にもひかれる映画「BLUE/ブルー」
2024.7.18(木)
近年、「空白」「ミッシング」と事件や事故から登場人物の人間性を克明に描きだす吉田恵輔。「神は見返りを求める」では、YouTuberという現代社会に根付いたばかりの文化から、誰しもに纏わりつく他人との関係性という問題をスクリーンに映してみせた。そんな吉田恵輔の作品でいわば映画の一つの王道とも言えるボクシングというテーマを扱った作品が「BLUE/ブルー」だ。
(C)2021「BLUE/ブルー」製作委員会
「BLUE/ブルー」は松山ケンイチが演じる瓜田信人を中心として、ボクシングにのめり込むボクサーが描かれる。瓜田と同じジムに所属するプロボクサーの小川一樹(東出昌大)は、とにかく勝てない瓜田と相反するように日本チャンピオンの挑戦まで勝ちを進めていく。また小川は瓜田の思い人でもあった天野千佳(木村文乃)との交際も順調に進めていった。そんな中、自身に才能がないことがわかりながらも瓜田はもがき続ける...という観ていると登場人物の誰かに胸を締め付けられる、そんな切なさを含ませた作品だ。
松山演じる瓜田は一度も勝てない。正確にいうと勝ち星をあげたことは二度あるが劇中で勝つ場面は一つもない。ジムには誰よりも居残り安月給のアパートで小数点以下まで自身の体重を管理するにも関わらず、だ。努力しても努力しても負ける。
だが、後輩や天野には弱みを見せない。「自分は負け慣れているから」と笑顔を佇ませて静かにサポートに徹していく。しかし、時に笑顔でさえも隠しきれない悔しさやボクシングが好きという思いが松山の繊細な表情から見て取れ、その細やかなボクサーと普通の人間としての間で揺れる情動の機微が観客を努力が報われない悲哀へと導く。
(C)2021「BLUE/ブルー」製作委員会
「BLUE/ブルー」というタイトルにあるようにボクシングでいう青コーナーは挑戦者を意味する。瓜田の居場所はいつも青コーナーだ。それでも尚、立ち向かい続ける松山の芝居は観客である我々に痛々しくもあるこの姿から目を背けられるのか?と挑戦しているようにも感じられるほど、見事に演じきっている。
瓜田の思い人であり、小川の恋人でもある天野も切ない。実は小川は日本チャンピオンまで上り詰めるも、ボクシングで培ってきた脳へのダメージは日常生活に支障をきたすほど無視できないものになっていた。小川にボクシングを引退して欲しいと思いつつも本人に言うことは出来ない天野は瓜田に相談するが、小川のボクシングへの気持ちを理解している瓜田はなにも言うことが出来ない。
天野は小川の恋人であるが、劇中で瓜田の試合も鑑賞している。小川のタイトル戦では試合中に瓜田の応援する姿勢に目を奪われるほど、瓜田のことも見守っていた。大事な人たちへの健やかに生きて欲しいという願いと、熱すぎるほどの情熱にふれ現実で身動きが取れなくなる女性を木村は佇まいで示す。自身が当事者で無いからこそ、佇むことしか出来ない無力さや悲しさを数多くの言葉ではなく存在で表現しているのは、瓜田とも違った悲哀を観客に突き付ける。
その他にも東出演じる小川が自身のボクシングによるダメージと現役続行との間で苦悩する姿や楢崎剛(柄本時生)が好きな女性への噓から出た実として入会したボクシングジムで、ボクシングにのめり込んでいく姿は十人十色の人生を提示しており、実力派俳優たちの描く、それぞれの人生は見逃せない一作となっている。
文=田中諒
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