若かりし日の渡哲也、吉永小百合の表情が眩しい映画「愛と死の記録」
2024.7.16(火)
若かりし日の渡哲也、吉永小百合が出演する映画「愛と死の記録」。冒頭、緊張感のある音楽で始まり、2人の男女が出会い、恋に落ちる。幸せオーラ全開の前半の中で、なぜか感じる不穏な空気。そして中盤、その不穏さのワケが分かったときには既に作品に引き込まれ、後半は一気にダークな世界へ。天から地へとジェットコースターのような展開に驚愕するばかりだった。
(C)1966年日活株式会社
オートバイに乗っていた三原幸雄(渡)は、楽器店の前で危うく人を撥ねそうになる。引かれそうになった松井和江(吉永)は手に持っていたレコードは割れてしまったものの、ケガはなかった。そんな風にして出会った2人は、喫茶店でレコード談義をしたり、友人とWデートをしたり、急速に盛り上がっていく。デートの帰り、2人の未来を語る和江に暗い顔をする幸雄。何かあると察した和江がわけを問いただすも幸雄は打ち明けてはくれない。幸雄の職場でも和江とデートを重ねる話は格好の噂の的となり、同僚たちは冷やかし半分、大いに祝福していた。だが、幸雄の親代わりの岩井(佐野浅夫)だけは深刻な表情をしていた。実は、幸雄は4歳のときに被ばくし、両親も失っていたのだった。そして数日後、幸雄は仕事中、極度の貧血で倒れてしまう。
(C)1966年日活株式会社
今から58年前に公開された本作は、オートバイをノーヘルで乗り回し、トラックの荷台に人が乗っている、今では考えられないシーンが多数出てくる。映像はモノクロでCGもない、だがしかし、海も山も色づいているように美しく感じた。それは前半の幸雄と和江がデートをするシーンだった。渡と吉永の醸し出すキラキラとした空気感、恋の始まりを予感させる雰囲気がそう感じさせたのだろう。そんな2人の運命の歯車は、後半に向けて加速度的に狂っていく。
(C)1966年日活株式会社
終戦から21年、広島を舞台にした本作。公開された1966年といえば、高度経済成長期の最中、日本中が活気づいていた頃だろう。一方でまだ戦後の闇も色濃く残っていた時代でもある。当時の若者は、愛を語り合う渡のキザなセリフに、吉永のはじける笑顔に、うっとりしたことだろう。そして、残酷な2人の運命に頭をガーンと殴られたような衝撃を受けただろう。パワフルだった、太陽のような輝きを放っていた、だからこそ暗闇に落ちたときのギャップはすさまじい。その落差を見事に演じ切っていた渡と吉永。今の時代に本作を見る日本人は何を思うだろうか。見終わったとき、それぞれに感じることがある、そう断言できる秀逸作だ。
文=石塚ともか
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