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骨太の人間ドラマを形成する若かりし藤岡弘が描き出す仮面ライダーの人間性

2024.7.10(水)

1971年から少年たちを魅了して止まない「仮面ライダー」。昭和、平成、令和と、時代と共に進化し続け、9月からスタートする"令和ライダー第6作"の「仮面ライダーガヴ」(テレビ朝日系)では、お菓子をモチーフにした前代未聞の仮面ライダーが誕生する。

仮面ライダーの歩みが半世紀以上続いたのは、制作陣の努力と時代のニーズに応えようとする気概はもちろんだが、何より1971年の第1作「仮面ライダー」が世に与えたインパクトが推進力となっているのが大きい。現在の「日曜の朝9時といえば」というような視聴モデルは存在せず、成功するか失敗するか分からない当時、"変身""(バイクに乗る)ライダー""必殺技"という子供たちの心をつかむキャッチーな要素を組み込みながら勧善懲悪を描いて、"変身ブーム"を巻き起こした。

(C)石森プロ・東映

一方で、本筋となるストーリーでは、怪人に改造されかけていたという異形のヒーロー像や、世界征服を企てる悪にたった一人で立ち向かう孤独な戦いを続けるという、常に"悲哀"が漂う骨太の人間ドラマが描かれており、他の作品とは一線を画した大人の視聴者に熱狂的なファンを有する特別なものとなっている。

(C)石森プロ・東映

その大人のコアなファンの心をくすぐるのが、藤岡弘(現・藤岡弘、)の名演技だ。当時25歳という若さながら、スポーツ万能の優秀なオートレーサーという役どころの本郷猛を圧倒的な存在感で描き出している。変身前のアクションの鋭さはもちろん、アクション以外での立ち居振る舞いやせりふ回し、会話での間の取り方など、「これぞヒーロー」というカッコいい雰囲気を常に漂わせているのだ。この"常に"というところがポイントで、役者としてはアクションシーンある中で、"常に"役としてのオーラを纏い続ける演技力は、大人目線でも感情移入を促されてしまうほど。

そんな中で、特筆すべきは藤岡が表す"哀愁"だ。前述したとおり、作品を通して描かれる"悲哀"こそが作品の醍醐味となっているのだが、その"悲哀"を藤岡が一瞬の表情や背中、バックショットでの肩などで、せりふに頼ることなく雄弁に語っている。敵を倒した際も、喜びよりも迷いや悲しみ、苦悩などをにじませ、より"人間性"を大事に演じている。それこそが人外となってしまった本郷の背負った業として彼をしばり続けているという物語の分厚さを形成しているのだ。

仮面ライダーの"人間性"を丁寧に描き出した若干25歳の藤岡弘の演技力に注目しながら、骨太の人間ドラマを堪能してほしい。

文=原田健

放送情報【スカパー!】

仮面ライダー 4Kリマスター版#1(セレクション放送)
放送日時:8月2日(金)18:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります