山下智久が視力を失う役に挑戦し、引き込まれる演技を見せた、映画「SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる」
2024.6.25(火)
俳優としてアーティストとして、常に新たな領域に挑み続けている山下智久。そんな彼の新たな挑戦となった一作が、日本映画専門チャンネルで7月7日(日)にTV初放送される映画「SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる」(2023年)だ。「私の頭の中の消しゴム」(2004年)を手がけたイ・ジェハン監督によるラブストーリーで、山下は突如として視力を失ってしまった漫画家を演じる。
漫画家として生計を立てている泉本真治(山下智久)のもとに、作品が映画化されるという朗報が舞い込んだ。連載も軌道に乗ってきたところだったが、真治は病に倒れ、目が見えなくなってしまう。絶望に打ちひしがれた彼は自室のベランダから飛び降りようとしたものの、真治の漫画のファンである相田響(新木優子)に助けられる。生まれつき耳が聞こえない響は真治の家に毎日やってくるようになり、やがて二人は共同生活を始め、共に暮らす中で心を通わせ始める。
まず注目すべきは、山下が視力を失うという難役に挑戦した点だ。役作りとしては自宅で目隠しをしたり、視覚障がいのある人々にインタビューをしたりして役を形作っていった。一口に目が見えないといっても個々人の状況は様々であることを、インタビューを通じて知り、自分なりのスタイルを役に反映させながらも、手探りをする時の物の触り方など細かい部分で当事者から聞いた話を参考にしたという。

また、山下にとって実に6年ぶりとなるラブストーリーであり、40代を前にした彼が挑む純愛ドラマという点にも注目したい。年齢を重ねたことで、即物的な感情だけでなく奥深い部分にあるものも追求できるようになり、その深みは普遍的な愛を掘り下げようとする本作の骨格とも響きあうものがあったと言える。
おずおずとした手つきで真治が響にそっと触れ、優しく抱きしめ、つぶやくように愛をささやく。山下が静かに紡ぎ出すそんな営みのひとつひとつから、真治の抱える愛の深さがにじみ出ている。
視力を失って絶望の淵に突き落とされながらも、そこで最愛の人と出会い、幸せを見いだす真治。物語の後半では彼がさらなる試練に襲われることになり、ジェットコースターのような緩急も見どころの一つだ。
そんな感情の起伏が激しい展開ながら、全体的にはとても穏やかに感じられる点が本作の印象深いところ。こまやかな部分をカメラに捉え情感豊かに描き出すイ・ジェハン監督の手腕やエモーショナルな映像美もその理由として考えられるが、山下の演技も大きく寄与しているのではないだろうか。
真治は視力を失った絶望で叫ぶ場面こそあるものの、ベースとしては淡白で感情の抑揚があまりない人物のように映る。しかし、目をこらせば闇夜の中にも濃さの違う部分が見えてくるように、山下の淡々とした表情にも感情の陰影が複雑に織り込まれている。そんな静かな演技が、この作品の根幹を支えているように思えてならない。
繊細な演技を見せる一方で、山下は主題歌を歌うアーティストとしても本作に関わった。真治という役のDNAがしっかりと受け継がれ作品世界を温かく包み込む主題歌にも耳を傾けてもらいたい。
文=元永真
放送情報【スカパー!】
SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる
放送日時:7月7日(日)21:00~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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