桃井かおりのセクシーなモーニングコールは必見!鹿賀丈史、柄本明をはじめ、昭和の俳優たちの演技合戦が楽しめる異色のホームコメディ「木村家の人びと」
2024.6.3(月)
1988年に公開された映画「木村家の人びと」は、バブル経済期の日本を舞台に、家族一丸となって異常なまでに小金を貯めることに打ち込む木村家の奇妙な日常を描いた、異色のホームコメディである。原作は谷俊彦の同名小説で、谷は1986年に小説新潮新人賞を受賞している。監督は滝田洋二郎。滝田は1980年代にピンク映画界の気鋭監督として活躍した後、一般映画に進出。1986年公開の「コミック雑誌なんかいらない!」で高い評価を受けた。やがて2008年には「おくりびと」で日本映画史上初となるアカデミー外国語映画賞でオスカーを獲得して名を馳せている。
⒞1988 フジテレビジョン
本作は滝田監督が、バブル絶頂期という特異な時代背景において、過剰にお金に執着する木村家の人びとの不思議な日常生活の様子を、皮肉とユーモアたっぷりに描き出している。木村家の主人・肇を鹿賀丈史が演じ、妻・典子(桃井かおり)、長女・照美(岩崎ひろみ)、長男・太郎(伊崎充則)が主要キャストだ。岩崎、伊崎の2人は当時子役として活躍していたが、両名共に本作が映画デビューとなっている。
物語の舞台は、東京郊外の住宅地に一軒家を構え、家族一丸となって小金をためることに精を出す木村家。家長の肇は、サラリーマンとして働きながら仕出し弁当作りや、近所の暇な老人たちを総動員しての新聞配達といった副業に余念がない。妻の典子は、色っぽい声を駆使してセクシーなモーニングコールで稼いでいる。子供たちも小金稼ぎをサポートし、伯父に肩たたきを頼まれると「請求書」を渡す始末。だが、じつは太郎だけは家族の守銭奴ぶりに疑問を感じていた。肩たたき代を請求された典子の実兄・雨宮晋一(柄本明)と妻の小百合(木内みどり)は、太郎を気遣って雨宮家に引き取ろうと申し出るのだが...。
⒞1988 フジテレビジョン
本作はバブル期ならではのパワフルな家族の極端な描写が面白く、木村家の隣人で小金稼ぎのライバルとなる高倉家との争いがエスカレートするところなど、前半は笑いどころが満載。特に出色なのは桃井かおりの痛快なまでのはじけた演技だ。早朝、弁当を作りながらセクシーな喘ぎ声でモーニングコールをする場面で、「...起きましたぁ?」と急に素に戻るところなど、まさに秀逸である。前半こそコメディ要素が強いものの、後半は次第にシリアスな展開となる。太郎への愛情から小金稼ぎを辞めることを決意する肇の葛藤など、鹿賀の繊細な演技が身に染みる。鹿賀はパワフルな芝居で押せる役者だが、細かい演技も巧みであり、本作は彼の持ち味を滝田監督が見事に引き出しているという印象だ。桃井もまた、起伏のある芝居で抜群の存在感を発揮。さすがという演技を見せてくれる。
脚本を担当した一色伸幸も「バブルを描かせたら間違いなし」という人だけに、本作のストーリー運びもテンポ感が抜群。1987年公開の「私をスキーに連れてって」などでも発揮された軽妙なセリフの応酬が心地よい。今見たらコンプラ的に難しいと思われる場面も多々あるが、当時の空気が生き生きと伝わってくるので、今見るとより楽しめるかもしれない。ユーモラスな作品でありつつ、家族愛やお金の本質などを考えさせられる作品にもなっており、人間ドラマとしても十分見ごたえがある。映画「木村家の人びと」は、バブル期を知らない現代の若い人にもすすめたい一作だ。鹿賀丈史、桃井かおり共に昭和を代表する俳優のひとりだが、近年の俳優と比較しても強烈な個性を放っている。いわゆる替えの利かない役者の典型だといえるだろう。近年はクセの強い役どころが多い柄本明が、常識人的な好人物を演じているのも新鮮だ。ほかにも風見章子、加藤嘉、多々良純、竹中直人、小西博之、清水ミチコといった「昭和感」抜群の俳優たちが脇を固め、演技合戦が満喫できる一作としても貴重な映画である。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
木村家の人びと
放送日時:6月21日(金)21:00~
放送チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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