西野七瀬の「こじらせヒロイン」がいじらしい...神尾楓珠ら4人の大学生が繰り広げる恋愛談義もクセになる「恋は光」
2023.2.6(月)
恋とはいったい何なのか?古くから人類が悩まされてきた恋という形ないものへの疑問に、真剣に向き合う若者たちの姿を映し出した作品が2022年の映画「恋は光」だ。
WOWOWシネマで2月17日(金)に放送される本作は、恋をしている女性が光っているように見える青年と3人の女子学生が繰り広げる恋愛模様を描く青春ラブコメディ。恋をしている気持ちが可視化されたら、ラブストーリーは一体どうなるのか――秋★枝による同名人気コミックを「殺さない彼と死なない彼女」(2019年)などで知られる小林啓一監督が映画化した。
■その不器用さが妙に愛おしい!恋の光が視える男・西条を神尾楓珠が好演
神尾楓珠演じる主人公・西条は、恋をしている女性が光を放ってキラキラして視える男子大学生。その特異な体質ゆえに、恋とは無縁の生活を送ってきた。恋する乙女が放つ光をとにかく邪魔なものと疎んじている。文学的な独特の言い回しで長台詞を滔々(とうとう)と語り、あれこれと思考をめぐらす。メガネを持ち上げる仕草も垢抜けない風貌も、まるで一昔前の文学青年のようだ。
神尾が国宝級と名高いイケメンぶりを封印。これまでにあまり演じたことのないような、根暗で理屈っぽいインテリな大学生を好演した。風変わりな口調もだんだんと癖になり、その不器用さが妙に愛おしく思えてくる。
■西野七瀬がリアルに演じた"こじらせヒロイン"に共感
そんな風変わりな西条の幼なじみである北代は、西野七瀬が演じた。ずっと前から西条に片思いしているが「光っていない」と言われたことで、想いを打ち明けられずにいる。"幼なじみ"ポジションから抜け出せず、彼が他の女子と距離を縮めていく様子に心をざわつかせる。
一見気さくでノリはいいが、自分の恋愛に関しては上手くやれない。明るい笑顔と切ない表情のギャップに、見ているこちらの胸も締め付けられる。「センセ」と親しみを込めて呼びかける声、近くて遠い相手を見つめる"恋する瞳"がたまらない。こじらせヒロインを西野がリアルに演じた。
■平祐奈や馬場ふみか演じる"クセ強"なヒロインが複雑な恋愛模様を展開
(C)秋★枝/集英社・2022 映画「恋は光」製作委員会
西条の周辺で、北代と共に複雑な四角関係を展開する女子学生たちもなかなかに癖のあるキャラクターだ。純粋に恋を探究する文学少女・東雲には平祐奈が起用された。「恋というものを知りたい」と瞳を輝かせる彼女に西条はひと目惚れし、恋の定義を語り合う交換日記を始める。今時スマホも持たず、文学作品を読み漁り、恋愛経験もない。そんな浮世離れした雰囲気を纏う東雲のあまりにも真っ白なピュアさが、平が自然と漂わせる透明感と絶妙にマッチする。
そして、古風な東雲とは真逆とも言える"いかにも女子大生"な宿木は、馬場ふみかが演じた。他人の彼氏を奪いたくなってしまう悪癖を持つ彼女は、西条を北代の彼氏と勘違いして猛アプローチを開始する。本心では素直に恋をしたいと思っているが、「恋は戦い」と言い放つ。感情を包み隠さない率直な物言いも、自らを嫌な女と評する所も、むしろ清々しくて好感が持てる。
(C)秋★枝/集英社・2022 映画「恋は光」製作委員会
西条の初恋を軸に、恋愛感情に振り回されながら恋の定義を真剣に考察していく4人。大論争を展開していく中で、随所に映し出されるナチュラルな映像美も印象に残る。天気雨から逃れて木陰で雨宿りする西条と東雲に、少しずつ光が差し込んでいくシーンなど、恋する気持ちを想起させるような情緒溢れる風景が美しい。
のどかな大自然に囲まれて釣りに興じる姿、女子会が繰り広げられる古民家の縁側、趣き深い街並みなど、どこか懐かしい景色も素敵だ。光はもちろん静けさや温もりなど五感を通して、様々な恋に触れたような気持ちになった。恋とは誰しもが語れるが、正しくは語れないもの。正解は一つではないのかもしれない。彼らの真っ直ぐさが、眩しく光っていた。
文=中川菜都美
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