生田斗真がトランスジェンダーの女性をリアルに演じた、映画「彼らが本気で編むときは、」
2024.5.24(金)
影のある犯罪者の役や神経質な刑事、誰もが憧れる先生...など、映画やドラマに主演し作品によってさまざまな顔を見せている生田斗真。そんな彼がトランスジェンダーという難役に挑んだのが映画「彼らが本気で編むときは、」。第67回ベルリン国際映画祭で、日本映画初のテディ審査員特別賞と観客賞(2nd place)をダブル受賞した荻上直子監督による人間ドラマである本作が6月12日(水)に日本映画専門チャンネルで放送される。
母親に育児放棄され、叔父のマキオと彼の恋人でトランスジェンダーのリンコと同居生活を始めることなった11歳のトモ(柿原りんか)。最初は抵抗したが、2人の優しさに触れ、次第に家族の一員になっていく。トモの目線でLGBTの人の悩みや悔しさ、家族の在り方が映し出されていく本作。メッセージ性はもちろんあるが、どこかほっこりとさせてくれる心温まる物語だ。
そんな物語で生田が演じたのは、体は男性、心は女性として生まれてきたが、性別適合手術をして体も女性として生活をしている主人公・リンコ。これまで繊細な役も多く演じてきたが、トランスジェンダーの役は初めてだったという。

出演が決まったときは「どうやってこの山を登っていけばいいのか」と悩んだというが、スクリーンに映し出されたリンコを追っていくと、いつしか女性にしか見えなくなる。ナチュラルメイクでかわいらしい女性のファッションに身を包んでいるが、そういった小道具より、美しい仕草と落ち着いた声のトーンでリアリティを持たせているのが圧巻。心から女性になりたいと悩んだ過去が見え隠れする、奥行きのある芝居を見せている。
そんな生田演じるリンコの恋人・マキオを演じたのが、一本筋の通った役を得意とする桐谷健太。本作ではワイルドな雰囲気を封印し、人を思いやることができる優しい男性を演じた。さりげない言葉やリンコに向ける表情一つで、実は芯が強いブレない心を持った男性であることが伝わってくる。自然体で決して前に出る芝居ではないが、作品を思い出すときに必ずマキオの表情が浮かんでくるから不思議。物語にスパイスを与える役に徹している彼の演技は、新たな魅力があふれている。
素晴らしいコンビネーションを見せた2人だが、本作から遡ること5年、青春群像ドラマ「遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~」('12年)で共演している。そのときは、ときに反発し合いながら田舎で生きる20代後半の青年を演じた2人。仕事や恋、将来に悩み、感情が揺らぐことが多い役ということもあり、感情があふれるシーンも多く、若者のどうしようもできない気持ちを見事に体現していた。

そんな彼らが経験を積んで、脂の乗りきった状態で挑んだ本作。淡々と、でも心の機微を丁寧に演じた彼らからは、リアリティとキャラクターの持つ優しさが伝わってくる。2人の演技力があったからこそ、この繊細な物語に奥行きが出たといえるだろう。
映画界・ドラマ界の第一線を走っている生田斗真と桐谷健太の、いつもとは違った演技を楽しめる「彼らが本気で編むときは、」。2人が紡ぎ出す世界に浸ってみてはいかが?
文=玉置晴子
放送情報【スカパー!】
彼らが本気で編むときは、
放送日時:6月12日(水)20:15~ ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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