当時20代の桃井かおりがアンニュイな雰囲気の女子大生を演じた映画「もう頬づえはつかない」
2024.5.6(月)
73才になっても、そのオーラと美しさをキープし続けている桃井かおり。20才で映画デビューを飾り、50代半ばで生活の拠点をL.A.に移し、ハリウッドに進出、日本でもドラマや映画に出演し、個性派女優として活躍している。
(C)1984 ディレクターズカンパニー/国際放映/ATG
今なお既存のモノサシに囚われない生き方が同性の支持を得ている桃井だが、主演映画「もう頬づえはつかない」が公開された1979年当時は、空前の桃井かおりブーム。同年に松田聖子がデビューし、"ぶりっ子"が流行語になる中、桃井を象徴するワードは"けだるい"を意味する"アンニュイ"だった。独特の喋り方や発言、媚びない、つるまない生き方は自立を目指す女子たちの憧れ。そんな桃井が男たちの間で揺れるヒロインの女子大生を演じ、大ヒットしたのが本作だ。原作は当時、早稲田大学の文学部に在籍していた見延典子が卒業制作として発表し、小説化されたベストセラー作で、メガホンをとったのはATGの青春映画「サード」が数々の賞に輝いた東陽一。桃井自身、同年に第3回日本アカデミー賞最優秀女優賞を獲得している。
■若き日の桃井と奥田瑛二、森本レオ、伊丹十三などキャストも贅沢
(C)1984 ディレクターズカンパニー/国際放映/ATG
桃井演じるまり子は、まだ学生紛争の名残りのある早稲田大学文学部に通う女子大生。アルバイト先で知り合った大学生・橋本と成り行きで付き合っている。本作でまず驚かされるのは男子禁制のアパートの窓からまり子が顔を出して外を見つめているオープニングのシーン。当時の桃井はまだ20代でもちろん若いのだが、醸し出すムードや表情が基本的に今と変わっていないのだ。まり子は橋本に身体を求められ、終わった後にけだるげにタバコを吸うが、こういう男女逆転シーンも当時は画期的。どこか頼りなさげな彼氏、橋本を俳優としてブレイクする前の奥田瑛二が演じ、一緒に暮らしていたのに突然姿を消し、まり子が忘れられないでいるルポライターの男・恒雄を森本レオが演じている。さらに後に「タンポポ」、「マルサの女」など監督として大成功を収める伊丹十三がまり子が住んでいるアパートの大家で美容院を経営している妻に頭が上がらない高見沢を演じているなどキャストも贅沢だ。
■今見てもオシャレな桃井かおりのファッションにも注目
時にお嬢様風のワンピースも着こなすまり子のファッションも本作のチェックポイントのひとつ。中でもクールなのはジーンズとVネックのインナーにトレンチコートを無造作に着て歩く姿。当時、女子から「カッコいい」とマネされた桃井のスタイルを映像を通して楽しむことができる。そして、本作のストーリーは好きでもない男と一緒にいるまり子のもとを音信不通だった恒雄が訪ねてくるところから大きく展開する。年上で知性派の恒雄の前では甘え、橋本と一緒にいる時とは全く違う顔を見せるまり子。再会しても、すぐに連絡がとれなくなる恒雄のアパートを訪ね、メモを書いて挟んで、自分のアパートの共有電話に連絡があるのを待つ恋愛模様はじれったくもあるが、2人の男たちの間で漂っているように見えるヒロインが女友達にも相談せず、悩み、結論を出していく過程を描いた本作は自分の足で歩いていこうとする女性像を浮き彫りにするものだ。
時代の空気感と、その先端を行っていた桃井かおりの存在と演技を堪能してほしい。
文=山本弘子
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