佐藤浩市と妻夫木聡の説得力のある演技に没入できる映画「ザ・マジックアワー」
2024.4.18(木)
三谷幸喜の監督4作目にあたる「ザ・マジックアワー」(2008年)。前作の「THE 有頂天ホテル」(2006年)が観客動員470万人を記録するほど大ヒットだった三谷監督の映画界への愛が詰まったノンストップコメディだ。
売れない俳優が参加した主演映画の撮影は全て偽物で、知らぬうちに"伝説の殺し屋"に仕立て上げられ、本物のギャングの抗争に巻き込まれていく...。港町を舞台に、絶妙なすれ違いと迫力のあるアクションシーンにハラハラしながら物語は進んでいく。
(C)2008 フジテレビ 東宝
予想もつかない物語展開は三谷作品ならではだが、何よりも魅力なのは出演俳優の豪華さ。主人公であるギャングのボスの愛人・マリに手を出したホテル支配人・備後登を妻夫木聡、備後が連れてきた幻の殺し屋・デラ富樫を演じさせられる三流役者・村田大樹を佐藤浩市が演じるほか、トラブルを抱えているギャングのボス・手塩幸之助を西田敏行、マリを深津絵里、備後のホテルで働く鹿島夏子を綾瀬はるか、夏子の父・隆を伊吹吾郎、村田のマネージャー・長谷川謙十郎を小日向文世が演じるなど、誰もが映画やドラマで見ない日はないほどの人気者ばかり。また劇中劇のちょっとした役に中井貴一、天海祐希、谷原章介、唐沢寿明、鈴木京香が扮し、果てには1シーンだけ出演する映画監督に市川崑監督、ストリートミュージシャンに香取慎吾が参加している。
元々、三谷作品は常連と呼ばれる俳優が出演するのが定番だが、それを越えるキャストが揃った本作。それぞれが個性的に、そしてインパクトを残しているのがさすがだ。
(C)2008 フジテレビ 東宝
そんな豪華キャストの中でひときわ輝いているのが、街で起きていることは全て映画の撮影だと思い込んでいる村田大樹を演じる佐藤浩市。これまでも、「新選組!」(2004年、NHK)、「THE 有頂天ホテル」で三谷監督とタッグを組んできたが、ここまでコメディに寄った演技をするのは初めてに近い。なかでもボスを脅すためにナイフをなめるシーンは、本人が後日、「コメディはどこまでがOKか、OVER DO(やりすぎ)にならないかの塩梅なんです。やり足りなければ笑いは起きないし、やりすぎても白けてしまう。どうやろうかなっていうのを風呂場の鏡で見ながら...」と語るほど悩んだ迷シーン。今でも、"佐藤浩市=ナイフ"と言われるほど語り草になっている。
オーバーだけど村田ならやりかねないと思える絶妙なバランスで成り立っており、ここまで村田が"芝居が古い三流役者"であることを観客に納得させていた佐藤の演技があったからこそ映えたといえるワンシーンといえる。また、当時の佐藤浩市といえば少し影のある役を得意とする二枚目俳優で、そんな彼が眼光を光らせてナイフをなめるので、そのギャップも笑いを増幅させていた。
(C)2008 フジテレビ 東宝
また佐藤同様、物語に引き込ませているのが妻夫木聡。自分たちが助かるために村田をダマし、すべてを仕込んでいる人物でありながら、あたふたと奮闘している姿を見ると、備後も悪い人ではないと思わす。これも妻夫木のどこか愛らしく憎めない演技だからこそ。"濃い"佐藤とのバランスもマッチしていた。
太陽が沈んだ後の、まだ辺りが残光に照らされているほんのわずかな、しかし最も美しい時間帯を意味する"マジックアワー"をタイトルにした本作。観ていると、何が現実でどこまでが映画なのか分からなくなってくる。また、俳優それぞれの演技も誇張しているのにどこかリアルで、こんな人がどこかの世界にいるのかも...と思わす魅力を持っている。ぜひ、映画だから実現した豪華キャストの共演と予想もつかないストーリーを楽しみたい。
文=玉置晴子
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