固定化された概念に疑問を投げかける映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」で、細田佳央太、駒井蓮が表現したものとは
2024.4.3(水)
大前粟生の小説を、立命館大学映像学部出身の新星・金子由里奈監督が映画化した「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」(2023年)。繊細な演技に定評のある細田佳央太や儚さと真の強さの両方を漂わせる駒井蓮らフレッシュな顔ぶれが集った今作は、心の奥底にある本音をぬいぐるみだけに話す"ぬいぐるみサークル"の学生たちの物語。細田演じる、従来の恋愛観や男らしさ、女らしさに違和感を持つ七森らの大学生活を通して、現代社会のなかにある抑圧的な慣習を浮き彫りにしていく。
(C)映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」
例えば、大学生活では恋愛を楽しむべき、彼氏彼女はいる方が良い、誰もが彼氏彼女を欲しているという感覚は、実は一部のものであって、全体のものではない。しかし、現代社会ではこれらの感覚が"普通"という言葉で括られ、声の大きな人間がスローガンのように掲げている。その結果、一部の人間にとっての"普通"が、世間的な共通意識として正当化されていく。だが、常に違和感を抱いている者は存在している。この状況に正面から立ち向かい、映像化しているのが、この「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」だ。細田演じる主人公の七森は、大学の人と同じように"恋愛"をしてみるも、みんなのように楽しむことができずに思い悩む。しかし、決して自分以外の誰かに気持ちをぶつけることはしない、心やさしい人間だ。
(C)映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」
やさしいからこそ、傷付く。"ぬいぐるみサークル"以外のよく知らない相手の言動が心に引っ掛かり、その度に力ない返事をして、その場しのぎの苦笑いをする。このようなことは多くの人が経験済みだと思うが、ほとんどの人がすぐに忘れてしまうのではないだろうか。しかし、"ぬいぐるみサークル"のメンバーは忘れることなく、心に留め、それをぬいぐるみに話す。行き場のない、どうしようもない思いをぬいぐるみに聞いてもらうのだ。時には、世界のどこかで繰り広げられている戦争や日常的に直面しているセクハラ被害に対する思いを吐き出すこともある。一見すると、彼らは嘆きや悲しみをぬいぐるみにしかぶつけられない弱い人間に映るかもしれない。しかし、ほかの人が無意識に見て見ぬふりしていることを見逃さない強さを秘めているとも受け取れる。
そんな弱さと強さを持つ七森や彼と一緒に"ぬいぐるみサークル"に入部する同級生の麦戸美海子を演じたのは、若き精鋭たち。2019年の石井裕也監督映画「町田くんの世界」に1000人近い候補者の中から選ばれて主演し、ドラマ「ドラゴン桜 第2シリーズ」(2021年、TBS系)での昆虫が好き過ぎる男子生徒役で注目を浴びた細田佳央太は、2001年12月12日生まれの22歳。その後もドラマ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」(2021年、日本テレビ系)で愛嬌たっぷりの全盲の青年を演じ、演技力の高さを証明した。町田くんなどクセの強い役もうまいが、今回は穏やかで静かなタイプの七森をナチュラルに表現。不器用ながらもまっすぐに生きようとする真の強さも見せつけた。
その七森と通ずるものを感じさせる麦戸を演じたのは、駒井蓮。2021年、自身の地元である青森を舞台にした映画「いとみち」に主演し、「第34回 日刊スポーツ映画大賞」新人賞や「第35回 高崎映画祭」で最優秀新進俳優賞を受賞した、2000年12月2日生まれの23歳。「いとみち」では自分と人と比べてばかりで自信が持てず引っ込み思案だが、どこか放っておけない女子高生役を好演していた。今作では、控えめながら確固たる芯を感じさせる演技が光る。また、他人に起こったことをないがしろにしない、圧倒的やさしさを持つ麦戸を全身で表現していた。
映画の公式ホームページで、細田は"間違いなく、今やるべき作品だと感じた。七森と同じ苦しみや悩みを抱えている人たちの気持ちが少しでも楽になってもらえたら嬉しい"とコメントしている。今は各所で"多様性"や"新たなジェンダーロール"が謳われているが、まだまだ特別扱いでスタンダードに落ち着くには時間がかかりそう。しかし、実際はこの映画のように"ごく普通"の人々も心を痛めている話だ。今作はぬいぐるみというファンシーな存在を用いながら、そのことを鮮烈に示している。七森らを通して気付きを与えてくれる、まさに今、見るべき映画である。
文=及川静
放送情報【スカパー!】
ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい
放送日時:4月9日(火)10:00~
放送チャンネル:WOWOW ライブ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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