吉田鋼太郎のややこしいけど情に厚く憎めない父親像！続編＆映画版も間近に控えた人気ドラマ「おいハンサム!!」

2024.3.26(火)

「恋」と「家族」と「ゴハン」をめぐる人気ドラマ「おいハンサム!!」のSeason2が4月6日(土)からフジテレビ系列で放送スタート、さらに6月21日(金)には映画版が公開。2022年に深夜ドラマとして始まった本作だが、その人気の高さがうかがえるような新展開を見せている。

「ナニワ金融道」シリーズ、「ランチの女王」(2002年)など数々の名作ドラマのプロデュースや、「闇金ウシジマくん」シリーズなどで知られるヒットの仕掛人・山口雅俊が脚本と演出を務めた「おいハンサム!!」。人気漫画家の伊藤理佐が描いた複数の漫画エピソードを縦横無尽につなぎ合わせ、ハイブリッドな新しいホームコメディが完成。SNSでも反響を呼び、第38回ATP賞テレビグランプリドラマ部門奨励賞ほか多数の賞にも輝いた。

続編＆映画化というシリーズ再始動に先立ち、未公開シーンを追加した「ディレクターズカット版」が4月5日(金)に日本映画専門チャンネルで一挙放送される。家族の幸せが一番のちょっとウザい父・伊藤源太郎は、妻の千鶴と東京の長い商店街の外れにある一軒家に住んでいた。3人の娘はそれぞれ独立して立派に暮らしている...と思いきや、長女・由香は独身で不倫に陥ってしまい、エリート男性と結婚したはずの次女・里香にも離婚の危機が訪れていた。さらには三女・美香も売れそうにない冴えない漫画家と交際している。男運ゼロで男を見る目がまったくない愛する娘たち。家族の幸せのため、強いパパ・源太郎が立ち上がる。

愛すべき伊藤家のパパ・源太郎には、日本を代表するシェイクスピア俳優・吉田鋼太郎が起用された。近年では映像作品でもその存在感を発揮し、舞台だけでなく写真集の発売やバラエティ番組のナレーションまで活躍は多岐にわたる。2013年の大ヒット作「半沢直樹」や「おっさんずラブ」シリーズをはじめ、硬軟自在な演技で視聴者を魅了してきた。

「おいハンサム!!」でも娘たちの幸せを心から祈る偉大なパパをコミカルに好演。面倒でややこしいけれど、ハンサムに繰り出す全力の説教も娘への深い愛ゆえ。そして、茶柱が立ったと喜んだり、酔っ払って醜態を晒す様も、好きな歌を槍玉に挙げられて必死になる姿も、渋いイケオジなのに可愛らしくて微笑ましい。ちょっと鬱陶しいところすらも絶妙で結局は憎めないのだ。

そんなパパが愛する妻と三姉妹を演じたキャストも良い味を出している。良き理解者である妻を演じるMEGUMIは、夫婦漫才のごとく頑固親父を淡々と受け流す。泥酔していても慣れた手つきで世話を焼き、寝相だけでその心を読み取る。夫を立てながら裏ではそっと家族を包み込む良き妻役で、ドラマをも上手くまとめ上げた。

幸せを求めさまよう娘たちの役を、木南晴夏、佐久間由衣、武田玲奈がそれぞれリアルなキャラクターを演じた。時にウザいと思いながらもパパの深く重い愛をちゃんと分かっているからこそ、時にわがままを言ったり悪態をついたりする。彼女たちの中に両親の要素が少しずつ引き継がれていて、自然と畳み掛けるような掛け合いや無言の間が積み上げてきた家族の歴史を感じさせる。

吉田ら俳優陣が作り出す自然な空気感、見れば見るほどクセになる独特の世界観と斬新な切り口で、単なるコメディともホームドラマともジャンル分けしがたい本作。続編＆映画化を心待ちにしながら、今改めて振り返りたい。

文＝中川菜都美

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