筒井真理子、光石研、磯村勇斗が、映画「波紋」で見せるリアルな人間社会の闇
2024.3.21(木)

「かもめ食堂」(2006年)「彼らが本気で編むときは、」(2017年)などで知られる荻上直子監督が、現代社会が抱える問題に翻弄される中年女性とその家族を描いた「波紋」(2023年)。物語は、東日本大震災で水道汚染の風評被害が流れるニュースを家族が見ているシーンからスタート。寝たきりの義父の介護を一人でする主婦を横目に手伝わない夫が前触れもなく失踪。息子と三人暮らしを始めるが自分ではどうにもできない辛苦が降りかかり、いつしか新興宗教にのめり込んでいく...。

(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ
そんな荻上監督のブラックユーモアがふんだんに詰まった絶望エンターテイメントをリアルかつユーモラスにしたのは、主演の筒井真理子、光石研、磯村勇斗ら実力派俳優たち。
一見、どこにでもいそうな平凡な主婦・依子を演じるのは筒井真理子。自分の中で沸き起こる黒い感情に悩む姿を見事に体現している。中でも、新興宗教を信じることで解脱したようなアルカイックスマイルを見せたり、息子が連れてきた恋人が聴覚障害者で年上であることに差別感情を抑えられない取り繕った笑顔で対応するシーンなどで見せる、感情を押し殺した表情はそこはかとない恐怖を与える。そしてそんな彼女はジワジワ追い詰められ、感情を隠しきれなくなり、ついに雨の中、喪服姿でフラメンコを踊り狂う。そんな狂気満載のラストシーンの姿に圧倒され、筒井真理子のワンマンショーに魅了される。

(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ
筒井真理子はデビューこそ主演だったが、キレイなお姉さんや主婦、母親役を多く演じてきたバイプレイヤー。そんな彼女の演技が評価されたのが、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した「淵に立つ」(2016年)。ある男によって家庭が崩壊し心が壊れていく母親を演じ、複数の映画祭で主演女優賞に輝いた。その後、「よこがお」(2019年)で美しくも怪しい女性を演じ、全国映連賞女優賞やAsian Film FestivalのBest Actress最優秀賞受賞。どこか普通ではない人を多く演じ、年々、評価が高まっている。
そんな筒井が演じる依子の夫・修を演じたのは光石研。最初こそ普通のサラリーマンだったが、失踪から11年、戻ってきたときはくたびれたおじさんに。失踪理由も語らず、がんの治療費を出して欲しいと頼むシーンでは、11年前の一人で父親を介護する依子を見て見ぬ振りしていたずる賢い姿が全面に出て、修の変わらない本質が見えてくる。大変なことや見たくないことから逃げる、誰もが持っている人間のイヤな部分をサラリと見せつける光石の演技には、怒りと哀れといった感情が揺さぶられる。
また依子と修の一人息子・拓哉を演じている磯村勇斗も本作にリアリティを追加。自分と恋人のことしか頭にない若者らしい残酷さを飄々と演じ、依子を追い詰めていく。

(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ
彼ら以外にも、ご近所マナーを守らない隣人役の安藤玉恵、新興宗教の信者で依子に優しい言葉をかけるも宗教団体のことしか頭にない信者役の江口のりこと平岩紙、依子のパート先に現われ傍若無人な振る舞いをする客役の柄本明など、どこか人間くさいけど決して自分の周りにはいてほしくない人物を個性派俳優が演じ、物語に悪意を追加していく。そして彼らが巻き起こすグルーヴは、依子を理不尽という渦に巻き込んでいくのだ。
東日本大震災以降の不穏な空気の中、老老介護や新興宗教、隣人トラブル、更年期障害...といった現代社会の闇や不安が描かれる本作。テーマだけを聞くと重そうに見えるが、蓋を開けるとスタイリッシュで笑えるエンターテイメント作に昇華されている。実力派俳優が演じるヤバイ人をぜひ堪能して欲しい。
文=玉置晴子
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