江口のりこの演技力・表現力が光る、ドラマ「お母さんが一緒」
2024.2.16(金)

いつの時代も家族は温かいイメージがある一方、さまざまな葛藤や衝突も起こす厄介な存在でもある。ホームドラマチャンネルが開局25周年を記念して放送するオリジナルドラマ「お母さんが一緒」は、一筋縄ではいかない親子の関係や、互いにコンプレックスを抱えた姉妹たちの複雑な胸の内をブラックユーモアたっぷりに描く作品だ。

(C)松竹ブロードキャスティング
本作は2015年に上演されたペヤンヌマキの同名舞台をドラマ化したもので、監督・脚本は映画「ぐるりのこと。」(2008年)など上質な人間ドラマに定評のある橋口亮輔が担当。江口のりこ、内田慈、古川琴音といった実力派俳優たちが中心となる三姉妹を演じる。
物語は三姉妹が母親を連れて温泉旅行に来たところから始まる。親孝行のためにやってきた旅行だったが、旅館に着くやいなや長女の弥生(江口のりこ)は不満ばかり。旅の手配をした次女・愛美(内田慈)はそんな姉に反発し、一方の三女・清美(古川琴音)は姉たちを冷ややかに見つめていた。母親の愚痴を言い合う3人はやがて互いへの不満も口にし始め、口論は徐々にエスカレート。そこへ清美がサプライズで呼んだ恋人も現れ、事態は思わぬ方向へ展開していく。
本作の面白い点は、「母親のようになりたくない」と口をそろえる三姉妹自身が皮肉にも母親に似た面を持っており、彼女たちを通じて母親の姿が見えてくるという点だ。

(C)松竹ブロードキャスティング
この点が最も如実に現れているのは、江口のりこ演じる長女の弥生だろう。折に触れて「お母さんがそう言ったから」と前置きつつ小言や愚痴を並べ立てる彼女の姿からは、弥生の人生に大きな影を落としている母親の姿が浮かび上がってくるかのようだ。つまり江口は長女の弥生を演じつつ、弥生の人生に大きな影を落としている"母親"という存在さえも同時に演じていると言える。独特なクセの強さに加え、アラフォー独身女性の悲哀を絶妙に表現しているシーンも印象的だ。
次女・愛美を演じる内田慈は原作となる舞台版にも次女役で出演しており、今回も同じ役を務めた。元々は舞台を中心に活動し、その後は映画やドラマにも活躍の場を広げた彼女だけに、相手が江口であろうとも濃度の高い罵り合戦をやってのけている。本編後のアナザーストーリーは愛美が主役となっており、そちらでは本編とは少し毛色の違う愛美の姿を繊細に演じていることも見逃せない。

(C)松竹ブロードキャスティング
三女の清美を演じるのは、2021年にブレークし個性派として注目される古川琴音。清美は姉たちの口ゲンカを一歩引いて見ている常識人かと思いきや、彼女も単なる可愛い末っ子ではない。達観したかのような古川のたたずまいからは姉たちを反面教師にする清美の強かさが感じられ、やがて彼女も曲者な二人の姉とがっちりかみあって三つ巴の姉妹バトルを展開する。密かに結婚報告を計画するなどサプライズの多いキャラクターでもあり、物語後半で見せる底力も注目ポイントだ。
原作が女の実態を描くものであるだけに、三姉妹がぶつけ合う不平不満の数々はなかなかにリアルで身につまされるものが多い。本作では温泉宿での一夜の出来事を描いているが、溜め込んだものを吐き出した江口、内田、古川が演じる三姉妹に救いの朝が訪れるのかは、ぜひ本編で確かめてもらいたい。
文=本永真里奈
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