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広瀬すずが見事なラップを披露し、新たな一面を見せた「ドラマWスペシャル あんのリリック -桜木杏、俳句はじめてみました-」

2024.1.22(月)

岩井俊二監督・脚本による音楽映画「キリエのうた」に出演し、これまで様々な役に挑んできた広瀬すずは、陰と陽の両方の魅力を兼ね備えている女優だ。キャリアを積んでもその引き出しはまだ未知数なのではないかと思わせてくれる存在である。そんな広瀬が主演し、ラップと俳句に初挑戦した「ドラマWスペシャル あんのリリック -桜木杏、俳句はじめてみました-」がWOWOWプラスで放映される。

窓際で広辞苑を読む杏(広瀬すず)
窓際で広辞苑を読む杏(広瀬すず)

© 2021 WOWOW / C.A.L.

原作は俳句と異なるジャンルのコラボを成功させてきた俳人・堀本裕樹の青春俳句小説。広瀬は幼少期から人とうまくコミュニケーションがとれず、自分を守るためのメガネが手離せなくなった芸大生・桜木杏を演じている。寮で暮らしている杏のアンテナが反応するのは言葉だけ。ラップのリリックを考え、通り道の掲示板に貼られてある言葉を俳句だとは知らないでノートにメモして、その意味をひとり想像して楽しんでいる。スイッチが入るといきなりマシンガンのように喋りだすヒロインが出会いによって変わっていく様や言葉を紡いでいくラップと俳句の共通項を描き出した本作は、まさに広瀬の陰と陽のギャップが味わえる作品だ。人と関わるとろくなことがないと思っている杏のコミュ障的行動や憂いのある表情は前者で、本当に嬉しい時にしか見せない無邪気な笑顔は後者。そして、作品のひとつの見せ場であるラップバトルのシーンでは意外な顔も見せてくれる。

■はちみつ好きの俳人・昴(宮沢氷魚)との出会いが杏を変える?

© 2021 WOWOW / C.A.L.
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有名ラッパー・ハゲボウズ(板橋駿谷)に匿名でリリックを提供している杏の才能に気づき、自分が参加している俳句の会に誘うのが、俳人で広告代理店に勤務しているコピーライターの昴だ。会社の上司の塔矢ローズゆり(夏川結衣)が俳句とラップをテーマにした"HAIKU×RAP"プロジェクト"を立ち上げることにより、生のライブを初めて見た昴は衝撃を受け、飲めないお酒を間違えて飲んで失神。店でアルバイトをしている杏が掃除をしながら口ずさんでいたリリックを夢心地で聞いたことが忘れられず、再び店を訪ねることになる。最初は隠れていた杏だったが、フリースタイルラップのことについて聞かれるとスイッチが入り、いつしか意気投合。いつも国語辞典を持ち歩いている杏と俳句のために歳時記を持ち歩いている昴が目を輝かせながら、話すシーンはなんとも印象的だ。杏の閉ざしていた心の扉が少し開くキッカケになった存在が昴。不器用だが、お人好しな彼女が笑う時は心の底から楽しい時なので、笑顔にほっとさせられる。そう思わせられるのも広瀬のリアリティのある演技があってこそかもしれない。

© 2021 WOWOW / C.A.L.

■初挑戦とは思えない広瀬のラップシーンにも注目

俳句の会に出席するようになり、心に響く言葉をくれる先生、本宮鮎彦(田辺誠一)との出会いもあって、杏が見ていた世界にどんどん光が差し込んでいく。中でも驚かされるのはプロジェクトの成り行きで、ハゲボウズとのラップバトルに挑むシーンだ。朝ドラ「なつぞら」で共演した経験もあって、板橋との対決はやりやすかったとのことだが、初めてとは思えないラップを披露、後半に行くにつれて熱量を増し、こちらの想像を超えてくるモノサシでは測れない広瀬の才能に驚かされる。恋の要素もありつつ、言葉を通して広がるイマジネーションにも気づかせてくれる後味爽やかな作品だ。

文=山本弘子

放送情報【スカパー】

ドラマWスペシャル あんのリリック -桜木杏、俳句はじめてみました- [前・後編]
放送日時:2月19日(月)0:45~
放送チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合があります