King Gun・井口理が初主演映画「ひとりぼっちじゃない」で見せた可能性
2023.12.30(土)
ロックバンド「King Gun」のボーカル、キーボードを担当するミュージシャンの井口理。近年はアーティスト活動だけではなく、映画「劇場」や「佐々木、イン、マイマイン」、「余命10年」などに出演し、俳優としての活動も行ってきた。そんな井口が、初主演を務めた映画が「ひとりぼっちじゃない」だ。
(C)2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会
井口はカリスマ的な人気を誇り東京ドーム公演などを行ってきた「King Gun」のボーカリストとして圧倒的な存在感を持つ。そんな彼が、「ひとりぼっちじゃない」では、自意識に囚われてしまい、人付き合いが苦手な歯科医師のススメという役に挑んだ。
メガホンをとったのは原作者でもある伊藤ちひろ。ススメという役は「井口しかいない」と出演を熱望したという経緯がある。井口自身、俳優として作品に出演した経験はあったものの、主演として作品を担うのは初めてだ。
原作には、ススメという人物の心理描写がしっかりと描かれていたが、映画では多くを語らず、非常に余白の多い芝居が要求されるようなキャラクターになっていた。演じるうえで、はっきりとした感情を表現する方が正解は見つけやすい。本作のススメのように、あまり感情を露わにせず、余白で人物を立体的に作ることは難易度が高い。
しかも演技経験はあるものの、本業はミュージシャンである井口。自身もインタビューでは、相当役柄について思いを巡らせたと話していた。実際、ススメが思いを寄せる馬場ふみか演じる宮子も、ススメ以上にバックボーンが描かれていないというキャラクター。
(C)2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会
作品全体が説明過多にはならず、余白で物語を埋めるというテイストになっている。初の映画主演で、こうした作風であることに、井口自身も相当な覚悟を持って臨んだことを舞台挨拶でも明かしていた。
実際、劇中のススメは、宮子に惹かれていくさまは描かれていたものの、その理由や心の揺れは、ほぼ説明がない。その場の瞬発力でどうにかなるようなキャラクターではないことは察していたようで井口自身、ススメがどんな生き方をして現在のような人間になったのか...ということを半年に渡って向き合ったという。
演じるというよりも、自身にしみ込ませるというアプローチ方法は、想像以上のカロリーを消費するが、こうした監督の要求を繊細に演じ切った井口。ススメと宮子の関係性は、多くのことを想像させるほど立体的だ。
アーティストが演技をする際、監督は「独特の間」に期待することがあると語ることが多い。井口自身のカリスマ的な存在感が、作品のなかでどう作用するかは作風によって異なるが、本作で見せたススメの自意識は、市井の人が持つ自意識のそれであり、まさにススメを体現していた。
本作によって「向いていない」と思っていた俳優業に対して「新たなスタートを切れた」と語っていた井口。今後も"俳優・井口理"を観たいと思える作品に仕上がっている。
文=磯部正和
放送情報【スカパー!】
ひとりぼっちじゃない
放送日時:1月6日(土)22:15~ほか
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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