星組トップスター・礼真琴が「静」の演技を開花させた、宝塚歌劇「ディミトリ~曙光に散る、紫の花~」('23年星組・東京・千秋楽)
2023.12.28(木)
星組公演「ディミトリ」は、黒海とカスピ海に挟まれたヨーロッパの東の果ての国、ジョージアを舞台にした作品だ。原作は並木陽の「斜陽の国のルスダン」。これに演出家の生田大和が着目し、タカラヅカらしい舞台に仕立ててみせた。
13世紀前半、ギオルギ王(綺城ひか理)がジョージアを治める時代、人質としてジョージアに送られてきたルーム・セルジュークの王子ディミトリ(礼真琴)はギオルギの妹ルスダン(舞空瞳)と共に育ち、互いに思いを寄せ合っていた。だが、ルスダンが嫁ぐ頃には別れねばならない運命をディミトリは覚悟していた。
ところが、モンゴルのチンギス・ハーンの侵攻でギオルギ王は深手を負ってしまう。王は、ルスダンにディミトリと結婚し、女王としてこの国を守るよう言い残して息絶えた。
ディミトリは、女王ルスダンとジョージアのために生きることを心に決める。しかし、廷臣らはルスダン女王に従わず、政務は困難を極めた。さらに、モンゴルによって国を奪われたホラズムの帝王ジャラルッディーン(瀬央ゆりあ)が、新たな国土を求めてジョージアに狙いを定めてくる。女王ルスダンのため、ディミトリは自分に何ができるかを考え、ある決断に至る...。
ディミトリを演じる星組トップスター・礼真琴は歌・ダンス・芝居と三拍子そろった安定の実力派。それゆえ、海外ミュージカル作品にも定評があり、「ロックオペラ モーツァルト」(2019年)、「ロミオとジュリエット」(2021年)、「Le Rouge et le Noir 〜赤と黒〜」「1789」(2023年)と主演してきた。さらに2024年の幕開けには話題の映画「RRR」を舞台化した「RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~」でビーム役を演じることでも注目されている。
その礼が演じるディミトリは「動」と「静」でいうならば「静」の役だ。これまで、どちらかというと前述したロミオをはじめ「動」の役が多かった礼の新たな魅力が開花した役でもある。もちろん、ノグチマサフミ振付によるジョージアンダンスの場面ではダンサーとして本領を発揮する。
並木陽作「斜陽の国ルスダン」より ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ
ルスダンを演じるトップ娘役・舞空瞳は、初めは無邪気な少女であったのが、苦難を経て、一国を背負う女王へと成長していく様を見せる。そのルスダンを何があってもブレずに支え続け、愛を貫くディミトリの姿が気高く美しい。
瀬央ゆりあ演じるジャラルッディーンは勇猛かつ残虐でさえあり、それでいて懐の深い帝王ぶりを見せる。ジョージアではどこまで行ってもよそ者であったディミトリの一番の理解者は、同じく亡国の王であるジャラルッディーンだったのかもしれないことを感じさせる。
原作から大幅に改変され、ほぼ新キャラクターといってもいい人物として描かれ、ルスダンに立ちはだかるのが、副宰相アヴァク・ザカリアン(暁千星)だ。この当時、月組から組替えしてきたばかりの暁が、一皮むけたところを見せてくれる。
ディミトリとルスダンの生き方の手本として登場するのが、ギオルギ王とバテシバ(有沙瞳)である。平民出身ながら王に愛されたバテシバは、王のため身を引き、王もそれを受け入れる。出番は最初だけだが、重要な役割だ。
モノトーン系でまとめたシンプルなつくりの舞台装置の中で、テーマカラーともいえるリラの花の紫色が目を引く。時折現れるリラの花の精たち(小桜ほのか・瑠璃花夏・詩ちづる)が、物語に希望の光を投げかける。
国も時代も決してタカラヅカに馴染みがあるわけではないのに、どこか素朴な懐かしさを感じる、そしてジョージアという国への興味をかき立てられる作品である。
文=中本千晶
放送情報【スカパー!】
ディミトリ~曙光に散る、紫の花~(’23年星組・東京・千秋楽)
放送日時:1月1日(月)17:30~ほか
放送チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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