原田知世が映画「紙屋悦子の青春」で見せる静かな演技を分析!「間」を自在に扱うモンスター級の演技力が判明
2023.12.10(日)
デビュー直後からテレビドラマや映画でヒロインを演じ、スクリーンデビュー作の映画「時をかける少女」(1984年)では第7回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した原田知世。その後、数々の話題作に出演し、近年では"考察ブーム"を巻き起こしたドラマ「あなたの番です」(2019年、日本テレビ系)や映画「あなたの番です 劇場版」(2021年)で主演を務めた。
原田の特長といえば、いくつになっても変わらぬ透明感のある清廉性だろう。それは彼女の持つかわいらしさや纏っている雰囲気によるものも少なくないが、何より説得力のある静かな演技で醸し出すオーラも大きな要因の一つだ。そんな彼女の説得力のある静かな芝居が堪能できる作品が映画「紙屋悦子の青春」(2006年)だろう。
(C)2006「紙屋悦子の青春」フィルムパートナーズ
同作品は、松田正隆の傑作戯曲を巨匠・黒木和雄監督が映画化したもので、敗戦を間近に控えた鹿児島の田舎町を舞台に繰り広げられる若者たちの恋と戦争による悲哀を描いた青春物語。昭和20年の春、兄夫婦と共に暮らす悦子(原田)の元に縁談が舞い込む。悦子は兄の後輩・明石少尉(松岡俊介)に思いを寄せていたが、縁談の相手は明石が紹介する明石の親友・永与少尉(永瀬正敏)だった。
(C)2006「紙屋悦子の青春」フィルムパートナーズ
明石も悦子に恋慕の情を抱きながらも、航空兵である自分よりも整備担当の永与の方が戦場に赴く可能性が低いため、最愛の人を親友に託したのだった。見合い当日、明石に連れられて紙屋家を訪れた永与は緊張のあまり失敗を繰り返すも、話すうちに彼の不器用さや友への思いやりを感じた悦子は次第に心を開いていく。その後、明石が特攻隊に志願し、間もなく出撃することを知った悦子はショックを受ける。
少ないカット割り、ゆったりとしたカメラワーク、極力省かれた効果音など、戦中でありながらも穏やかな雰囲気を描き出す黒木監督の演出もさることながら、原田の演技が作品世界に大きな効果を生み出している。発声のトーンやせりふ回し、動きに至るまで、隙のない演技で悦子の優しさや穏やかさ、器の大きさ、儚さ、強さなどを表現し、作品世界のリズムをコンダクト。中でも、「間」の使い方が圧巻で、せりふとせりふの「間」や受け答えでの「間」など、けっして豊かな表情や激しい目の動きなどを駆使するわけではなく、「間」の使い方一つで躊躇いや納得していない様子、疑問を飲み込んでいる様子や高揚感など、饒舌に心情を表現している。
(C)2006「紙屋悦子の青春」フィルムパートナーズ
戦時下の切ない恋を描く同作において、原田は時代の中を必死に生きる一人の女性を静かな演技でしっかりと紡ぎ、戦争という逃れられない時代の奔流に振り回された若者の悲哀をじんわりとだが、強烈に観る者に伝えている。彼女の優しく穏やかな"静かな演技"を支える自在に「間」を扱う様子からモンスター級の演技力を感じてみてほしい。
文=原田健
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