名家の御曹司が記憶喪失?松下洸平と土屋太鳳の魅力が満載の「やんごとなき一族」
2023.11.25(土)
2023年も劇場版「ミステリと言う勿れ」や秋ドラマ「いちばんすきな花」に出演するなど、印象に残る演技を見せた松下洸平。そんな彼が2022年に土屋太鳳と共演し、ロミオとジュリエットのようなロマンスを繰り広げたドラマが「やんごとなき一族」だ。
こやまゆかりの漫画をドラマ化したこの作品は、漫画だから成立するような現実離れした設定を果敢にも実写で再現。「やんごとなき一族」というのは、東京都内を始め多くの土地や不動産を保有する資産家であり、西洋の城のような豪邸に暮らす名家・深山家のこと。その次男坊である健太(松下)が、庶民的な食堂の娘である佐都(土屋)と恋に落ち、2年間の交際を経てプロポーズ。深山家の当主である父・圭一(石橋凌)は、「身分違いだ」と反対するが、「家族の縁を切る」という健太に、結婚を認める条件として、深山家での同居と会社を継ぐことを要求する。

健太と佐都は豪邸で暮らし始めるが、佐都は"深山家の女"として厳しい礼儀作法を学ばねばならず、姑である久美(木村多江)、長男・明人(尾上松也)とその妻・美保子(松本若菜)、三男・大介(渡邊圭祐)とその妻・リツコ(松本妃代)、そして健太の妹・有沙(馬場ふみか)らに、いちいち言動をチェックされ、シンデレラのように意地悪をされる。特に、気位の高い小姑の美保子とは壮絶なバトルを繰り広げることになる。

土屋は、庶民の娘ながら誇りを持って生きる「花より男子」の牧野つくし的なヒロインを好演。まっすぐな視線の中に強さと凜とした空気があり、その奮闘を思わず応援したくなる。終盤、佐都は健太との間に娘を出産するが、劇中で赤ちゃんの面倒を見る姿も、このドラマの後、2023年にめでたく第一子を出産した彼女のイメージが重なって微笑ましい。

松下はこのドラマや「最愛」など、愛する女性を一途に思い守りぬこうとする役柄が似合う。一方で、どんなシリアスな作品でも深い表現ができるアーティスト気質の彼だけに、本作のようなコミカルでベタな役柄はどうなのだろうとも思ったが、全力で演じ抜く姿に圧倒される。終盤、健太はあろうことか、記憶喪失になってしまうのだが、そんな現実離れした設定でも全力投球している。記憶をなくした健太は少し違う人格になっているという演じ分けも上手い。

松本若菜は、早口でキリキリとまくし立てるテンパりキャラの美保子を快演し、本作でザテレビジョン・ドラマアカデミー賞助演女優賞を獲得した。その後の活躍は大河ドラマ「どうする家康」の阿茶局役など、ご存知の通りだ。尾上松也や木村多江の熱演も光る。そして、脇役だが、佐都の実家の大衆食堂の常連客としてダチョウ倶楽部の3人が出演しており、撮影中に急逝してしまった上島竜兵が姿を見せているのにも注目したい。
演技達者な豪華キャストが本気で取り組んだ壮大なメロドラマ。理屈抜きでエンタメを楽しみたいときにぴったりの一作だ。
文=小田慶子
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