元雪組トップスター・望海風斗がコンサート「SPERO」で語った地元への想い

2023.11.21(火)

2021年4月に宝塚歌劇団を退団した元雪組トップスター・望海風斗。在団中から高く評価されていた歌とダンス、そして確かな存在感を武器に、現在はさまざまなミュージカルで輝きを放ち続ける彼女が、退団直後の2021年8～10月にコンサートツアー「SPERO」を開催した。なかでも、KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉での初日である9月26日は、神奈川県横浜市出身の望海にとっての凱旋公演となった。

中央にオーケストラピット、左右と上部に階段があるだけのシンプルでモダンなステージに、フィンガーウェーブのヘアスタイルにディープグリーンを基調としたロングコートという、クラシカルなファッションの望海が登場。2016年、雪組時代に同じ会場で主演した舞台『ドン・ジュアン』から「シャンジェ」を現役時代から変わらず安定した低音で歌い上げる。MCでは客席に向け、リラックスした笑顔を向けながら、望海は4つのサロンに分けられたコンサートの構成を紹介。「まずは1stサロン『シネマな望海』」と告げた望海は、中折れハットを目深にかぶり、『アルカポネ』より「この国に生きて」で観客を卓越した歌唱力で魅了したあとは、オフステージでの彼女を垣間見ることができるようなストーリーと共に、『カサブランカ』の「時の過ぎゆくままに」など、名作映画を彩った名曲を美しい高音と優雅なダンスを交えて披露。1stサロンの締めくくりには、パンツスーツ姿で、花組時代に演じた『オーシャンズ11』より「愛した日々に偽りはない」をドラマチックに歌い上げた。

ジャズがテーマの2ndサロンでは、中折れハットとピンストライプのパンツスーツに、ボルドーのベストというスタイリングで「Lover come back to me」や「Chicago」といったナンバーをダンスを交えてパフォーマンス。人気ミュージカルの名曲を続々と披露した3rdサロン「ミュージカルな望海」では、今までとはガラリと印象を変える、腕の部分がシースルーの華やかなピンクのショートジャケットとワイドパンツで登場した望海。ファンからのリクエストが殺到していたという『魔法にかけられて』より「そばにいて」や、いつか挑戦してみたかった曲とMCで明かした『ジキルとハイド』より「あんな人が」などを熱唱した。そして「横浜の皆さん、ただいまー！」と宣言してからのジャケットを脱ぎ、トップスター時代では決して見ることのできなかった鍛え上げられた美しい背中を披露したシーンでは、客席から大きな拍手が上がった。その後も、23年に出演した『ドリームガールズ』のタイトル曲など、珠玉のサウンドが望海の歌声で歌い上げられた。

そして最後の4thサロンでは、白がベースのドレッシーなワイドパンツのセットアップで、久保田利伸の「La・La・La LOVE SONG」をはじめとするJ-POPナンバーを披露。MCでは、小学生時代に、横浜市に在住していたならば誰もが開港記念日に歌うという「横浜市歌」を「どうしても横浜の地で歌いたい！」と熱く宣言。客席からの手拍子と共に、元気いっぱいに歌い上げると満面の笑みを浮かべ、「こんな大舞台で歌えるなんて幸せです！」とはしゃぐ姿からは、彼女のチャーミングな人柄を垣間見ることができた。

アンコールでは、雪組トップスター時代のショー『SUPER VOYAGER！』から「SUPER VOYAGER 希望の海へ」と、本ツアーのために書き下ろされた新曲「SPERO」が歌い上げられ、幕が下りたコンサート。日本ミュージカル界を牽引する大スターとなった彼女の魅力を存分に味わえるステージとなった。

文＝中村実香

• 望海風斗がコンサート「SPERO」を振り返る「新たな一歩を表現できたコンサートでした」
• 前・雪組トップコンビ望海風斗と真彩希帆ならではの異色のサヨナラ公演『f f f　ーフォルティッシッシモー』
• 望海風斗、真彩希帆、彩凪翔が振り返る！雪組公演「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」への想い