柳楽優弥が青年期の葛飾北斎の苦しみを表現しきった、映画「HOKUSAI」
2023.11.7(火)
映画「HOKUSAI」は、「富嶽三十六景」などで知られる江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の生きざまを描いた映画。青年期の北斎を柳楽優弥、老年期の北斎を田中泯がそれぞれエネルギッシュに演じている。さらに、北斎の才能を見出す版元・蔦屋重三郎役で阿部寛、人気戯作者・柳亭種彦役で永山瑛太、絵師・喜多川歌麿役で玉木宏も出演。実力派俳優の豪華共演も見逃せない。
(C)2020 HOKUSAI MOVIE
腕はいいが周囲には認められず、貧乏な生活を送っていた絵師・北斎(柳楽)。ある日、彼に人気浮世絵版元(=プロデューサー)の蔦屋重三郎(阿部)が目を付ける。しかし、絵を描くことの本質を捉えられていない北斎は、なかなか重三郎に認めてもらうことができずに苛立ちを募らせていく。そんな中、歌麿(玉木)や写楽(浦上晟周)といったライバルたちが成功を収め、彼らばかりがもてはやされる場面を目の当たりにし、嫉妬と悔しさに北斎は打ちひしがれる。
(C)2020 HOKUSAI MOVIE
"俺はなぜ絵を描いているんだ?""何を描きたいんだ?"と自問自答を繰り返し、やがては生死の境をさまようまで苦しみ抜くことに。そして、大自然の中で、彼はようやく本当に自分が求めていたものに気が付くのだった。北斎の代名詞ともいえる、波の絵の初めての一枚。その大切な絵を持って、重三郎の元を訪れた北斎の表情はとても穏やかで、絵を描くことの幸せをかみしめているかのように感じられた。こうして唯一無二の独創性を手にし、みるみるうちに売れっ子絵師となり、江戸の町人文化を押し上げるのに一役買った北斎だったが、一方で幕府の反感を買うことになり......。
うだつの上がらない貧乏絵師が、人々の出会い、衝突しながらも大きく変化し、売れっ子絵師になるまでの青年期の北斎の様子を感情豊かに演じ切った柳楽。自暴自棄になり海に入っていくシーン、北斎の才能が芽吹くことを誰よりも信じていた重三郎との絆を感じるシーンなど、見る者の心を動かす熱演のオンパレードだった。
老年期の北斎を語る上で欠かせないのは、戯作者・柳亭種彦(永山)との友情だろう。武士でありながら身分を隠してご禁制の戯作を生み出し続ける種彦に、北斎は共鳴し、2人は良きパートナーとなっていく。クライマックス、彼を思って一心不乱に絵を描く北斎は圧巻。田中の魂のこもった鬼気迫る芝居はすさまじく、狂気さえ感じるほど。
どんな日も、どんなときも絵を描き続けることを選んだ北斎。描き続けた先に彼が見たもの、手に入れたものとは? 90年の生涯で、描いた作品は3万点以上。ゴッホ、モネら名だたる印象画家たちの感性を刺激し、今もなお北斎の作品はアートの世界に影響を与え続けている。映画「HOKUSAI」は、柳楽優弥、田中泯の熱演によって、そんな彼の知られざる人生を感じることができる、稀有な作品だ。
文=鳥取えり
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