坂口健太郎の独特な雰囲気を最大限に感じられる、映画「サイド バイ サイド 隣にいる人」
2023.10.26(木)
坂口健太郎を見た人ならば、一度は彼独特の透明な雰囲気を感じたことがあるだろう。色白で涼しげな目元という"塩顔イケメン"の代表格としてブレイクした彼だが、ビジュアルだけでは片付けられない不思議な透明感と同時に、作品によってはダークな面もしっかりと表現できる、魅力的な"歪み"を持った俳優でもある。そんな彼の透明感と歪みを幻想的な映像美の中に閉じ込めた作品が、映画「サイド バイ サイド 隣にいる人」(2023年)だ。
(C)2023「サイド バイ サイド」製作委員会
目の前に存在しない"誰かの思い"が見える青年・未山(坂口健太郎)は、その不思議な力で周囲の人々を癒やしながら、恋人の詩織(市川実日子)とその娘と共に暮らしていた。そんなある日、彼はこれまでとは異質の強い思いを感じ始める。その思いは未山の後輩で、ミュージシャンとして活躍する草鹿(浅香航大)が発したものだった。草鹿との対面を果たした未山は昔の恋人である莉子(齋藤飛鳥)と再会し、自らが置き去りにしてきた過去と向き合うことになる。
本作の世界観は監督が「坂口健太郎さんの持つ圧倒的な透明感に魅了されてできた作品」と語るとおり、彼のために構築されたと言い切ってもいいだろう。自然豊かな長野で撮影され柔らかな光をまとった映像は坂口の持つ清涼な空気と溶け合い、彼がその美しい風景に溶け込んでいるのか、おとぎ話のような世界観が坂口のために存在するのか、分からなくなるほどだ。
(C)2023「サイド バイ サイド」製作委員会
寓話的で長回しを多用する映像の中で、坂口は未山を演じるというよりも未山として存在していると言ったほうが相応しい。青々と茂る緑の中をただ歩き、迷子になった牛に優しく声をかけて牧場へ連れていき、恋人とその娘のために台所で野菜を洗い、食卓を共にする。
静かな凪のような場面が続く中で、未山はほとんど表情の変化もない。しかし坂口を見ていると、無表情の中にも表情が見えてくるような感覚に浸されていく、不思議な瞬間が訪れる。それはこの映画で、坂口が演じる未山でしか味わえない、彼だからこそ為せる技といえるだろう。
銀幕に映るこの世界はリアルなのかファンタジーなのか――多くを語らず見る者の解釈に委ねるというスタンスが如実に感じられる本作は、説明的で分かりやすい作品が好まれる時代にあってかなり挑戦的だ。現代の童話のような作品が完成したのも、ひとえに坂口の透明感と歪み、そしてそれを最大限に活写しフィルムの世界に閉じ込めた監督の手腕あってのものだろう。社会の喧騒を忘れ、しばしここではないどこかへ心を放つにはうってつけの作品だ。
文=本永真里奈
放送情報【スカパー!】
サイド バイ サイド 隣にいる人
放送日時:11月19日(日)21:00~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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