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香取慎吾の愛すべき鈍感ダメ夫姿!愛嬌があってこそ完成した映画「犬も食わねどチャーリーは笑う」

2023.10.23(月)

「犬も食わねどチャーリーは笑う」
「犬も食わねどチャーリーは笑う」

歌手、アーティスト、俳優など、あらゆる方面で才能を発揮している香取慎吾。岸井ゆきのと夫婦役として共演した映画「犬も食わねどチャーリーは笑う」(2022年)では、妻が抱えていた不満に戸惑うダメ夫を好演。スターとしての華やかな存在感を封印し、平凡な男が妻との絆を見つめ直していく姿をコミカルかつ、繊細に演じ切っている。

本作は、結婚4年目を迎えた夫婦の譲らないバトルを描いたブラックコメディ。一見仲良しに見える裕次郎(香取)と日和(岸井)だが、日和の胸の内は、鈍感夫の裕次郎への不満でいっぱい。積もりに積もった鬱憤を吐き出さなければやっていられない日和が出会ったのが、SNSの"旦那デスノート"だった。

そこには妻たちの本音や、旦那たちが見たらゾッとするようなエグい投稿がびっしりと書き込まれていた。ある日、その存在を知ってしまった裕次郎が「これって俺のことか?」と気になる投稿を発見したことから、夫婦ゲンカのゴングが鳴り響く。

香取慎吾のコメディ力が堪能できる「犬も食わねどチャーリーは笑う」
香取慎吾のコメディ力が堪能できる「犬も食わねどチャーリーは笑う」

(C)2022 "犬も食わねどチャーリーは笑う" FILM PARTNERS

「箱入り息子の恋」(2013年)や「台風家族」(2019年)などの市井昌秀監督がメガホンを取った本作は、夫婦のすれ違いを鋭く浮き彫りにしながらも、温かな笑いに満ちているのが大きな魅力だ。日和が溜まりに溜まった旦那への不満を書き込んで共有できる"旦那デスノート"は、実在するWEBサイトだというから恐ろしくもあり、面白い。劇中で紹介される妻たちのユーモアの効いた黒い本音に何度もクスリとさせられた。

香取が演じた裕次郎は、冒頭から日和だけでなく、見る者も大いにイライラとさせてくれる。靴下を脱ぎ散らかし、妻が家事をやってくれるのは当たり前と思い込む。うんちくネタが大好きで、自分の興味のあることばかりしゃべり倒し、妻の不満を察知する気配もない。そんな鈍感夫の裕次郎が、"旦那デスノート"で罵倒されているのは、自分ではないかと気づく過程は爆笑必至だ。

最初は「いるいる、こういうヤツ」と笑っていたものの、次第に思い当たる節だらけの投稿を読み「あれ?これって俺のことじゃない?」と思い始める裕次郎。全身から噴き出す汗、震える唇、見開いた瞳...香取がセリフではなく、全身を使って裕次郎の戸惑いを体現しており、彼のコメディ力を堪能できる場面となっている。

「犬も食わねどチャーリーは笑う」
「犬も食わねどチャーリーは笑う」

(C)2022 "犬も食わねどチャーリーは笑う" FILM PARTNERS

"旦那デスノート"を見て激しく怒り、日和とぶつかった裕次郎は、自身の行動だけではなく、日和との出会い、夫婦として積み重ねてきた時間を見つめ直していく。日和の大切さを噛み締めて流す涙も印象深く、情けないダメ夫がたまらなくピュアで愛おしく見えてくるのだが、これは香取の大きな身体から滲み出るおおらかさや愛嬌があってこそ。彼自身の魅力が見事に裕次郎へ注がれたことで、愛すべきダメ夫が完成したように感じる。

また、日和役の岸井もさすがの名演を見せている。夫への怒りを爆発させるシーンは驚くほど迫力があり、彼と距離ができてしまった切なさを表現する場面は見ているこちらも思わずホロリ。その他、裕次郎の同僚を演じる井之脇海や的場浩司、余貴美子、日和の上司役に扮した眞島秀和など芸達者たちが賑やかなアンサンブルを奏でていた。

文=成田おり枝

放送情報【スカパー!】

犬も食わねどチャーリーは笑う
放送日時:2023年11月5日(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります