浜辺美波が"ミステリアス"の奥に潜む人物像まで演じ切った映画「やがて海へと届く」
2023.9.9(土)
2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞を受賞し、芸能界入りした浜辺美波。同年には早くも映画で主演を果たし、女優としての道を歩み始めた。そして2017年に主演を務めた映画「君の膵臓をたべたい」で大ブレイク。第41回日本アカデミー賞の新人俳優賞を始めとする数々の映画賞を受賞し、人気も実力も揺るぎないものとなった。
今年に入ってからも、NHK連続テレビ小説「らんまん」での演技が注目を浴びたり、仮面ライダー生誕50周年企画作品である映画「シン・仮面ライダー」にヒロイン役で出演するなど大活躍。まさにシンデレラ的な飛躍を遂げた女優と言えるだろう。
そんな浜辺の演技に胸を打たれる作品として注目したいのが、2022年に公開された映画「やがて海へと届く」。原作は彩瀬まるによる小説で、内気で自分を出すことが苦手な主人公の湖谷真奈は、岸井ゆきのが演じる。浜辺が演じるのは、真奈の親友である卯木すみれ。ミステリアスな部分を持ちながらも明るくて奔放、真奈を引っ張る存在だが、5年前に1人旅に出たきり消息を断ってしまう。
最初にすみれが登場するのは、大学に入った真奈がサークルの新歓コンパに誘われている回想シーン。先輩の勧誘に戸惑う真奈の横から突然現れたすみれは、笑顔を振りまきながら自らコンパに申し込む。あっけに取られる真奈と、楽しそうなすみれの表情が実に対照的で印象に残る。コンパでも、会話に加われない真奈、表情豊かに周囲とやり取りするすみれといった具合に、2人は全く異なる存在感を放つ。
しかし、コンパで気分が悪くなった真奈をすみれが介抱した後、2人は急接近。トイレから戻った2人に話しかける男性陣を避けるため、すみれは真奈の唇を奪い、「この子と付き合ってるんです」と言い放つのだ。
このインパクトのあるシーンでの言動ももちろんだが、その眼差しは非常に意味ありげで、すみれがミステリアスな人物であることを印象付ける。ほんのわずかなシーンでもそれが伝わってくるのは、浜辺がすみれという人物を寸分の隙もなく演じているからだろう。

そこから2人の親友としての関係が始まる。旅行中の電車内で交わす会話は本当に仲が良さそうだし、すみれが真奈の部屋に泊まった時は、心を優しく撫でるような、意味深でありながら心地良い会話を聞かせてくれる。
そして物語の終盤に向けて、すみれが消息を断った理由が少しづつ明かされてゆく。同時に、"ミステリアス"の奥に潜んでいたすみれという人物像も明らかになってゆく。
家を飛び出したすみれが雨の夜空を見上げる表情は、見ていて切なくなるほどだ。また、真奈の家を出て、彼氏である遠野敦(杉野遥亮)と暮らすために引っ越した時の、真奈から見たすみれの表情の変化にも胸を締め付けられる。
真奈の側から語られるすみれ。すみれの側から語られるすみれ。その両方を演じ切った浜辺の力量は見事だし、それがすみれという人物の内面を伝え、また真奈との関係の深さを伝えてくれる。そして2人の関係の深さを知るほどに、消息を断ったすみれの存在が悲しく映る。
特に強く印象に残るのは、真奈の部屋にすみれが現れるシーン。虚ろで、無表情なすみれ。すみれを見て涙を溢れさせる真奈。二度と戻れない時間をさまよう2人の思いの儚さに、つい涙腺が緩む必見のシーンだ。
浜辺はもちろん、主人公の真奈役を務める岸井も数々の映画賞を受賞している実力派女優。力ある2人の女優が表現する友情と、思いと、命の物語は、誰もが涙なくしては見られないだろう。
文=堀慎二郎
放送情報
やがて海へと届く
放送日時:2023年9月10日(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
放送日時:2023年9月11日(月)19:45~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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