「39歳」のヨン・ウジンのハマり役！初めての恋愛感情に戸惑うチャーミングなラブコメ演技

2023.2.20(月)

2本の主演映画「愛に奉仕せよ」「夜明けの詩」が2022年に相次いで日本公開されたヨン・ウジン。その一方で、自身の実年齢と同じ医師に扮したドラマ「39歳」では、ソン・イェジンとの"大人ロマンス"が多くの共感を集めたことも記憶に新しい。今年に入ってからも、同じく医師を演じる「今日もあなたに太陽を ～精神科ナースのダイアリー～」が配信予定と、その活躍ぶりはまだまだ加速しそうだ。

近年の出演作では、どちらかというとシリアスな役柄や年齢相応の落ち着いたキャラクターの印象が強いウジンだが、「離婚弁護士は恋愛中」(2015年)や「内省的なボス」(2017年)などそのキャリアを振り返るとラブコメ作品も多く、かつては"元祖ラブコメ職人"と呼ばれていたこともあった。

彼の初主演ドラマ「恋愛じゃなくて結婚」(2014年)も、韓国ではケーブルドラマでの放送ながら大ヒットを記録し、"ラブコメ職人"の名を高めた代表作の1本。結婚したくない男と結婚したくて堪らない女の恋の行方を描くストーリーで、ウジンは独身至上主義の美容外科医コン・ギテを演じた。

恋愛にも結婚にも無関心で独りでいることを好むギテ。女性と一緒にいる時も、スマホをいじったり、相手への思いやりを全く感じさせない不遜な態度を繰り返し、水をかけられたり、ビンタを食らったりも日常茶飯事。お見合いするシーンでは、水をかけられるよりも前にサッと身構えるなど、"水をかけられ慣れている＝いつもふざけた態度で接している"ことが伝わる、ディテールにこだわった演技を見せている。

一方、強い結婚願望のせいで恋人のイ・フンドン(ホ・ジョンミン)に逃げられてしまったチュ・ジャンミ(ハン・グル)は、300回も着信を残し、ストーカー行為で訴えられてしまう。フンドンの友人として、そんな2人の様子を見ていたギテは、「とにかく結婚！」と迫る母親に、ジャンミを自分の恋人として紹介することを思いつく。

空気が読めないジャンミを母親は気に入らないだろうし、ギテ自身、間違ってもジャンミとは恋に落ちるはずがないと確信。そして、「ジャンミと結婚する。反対するなら独身でいい」と言い張り、難を逃れようとする。

ところが、その読みに反して、ギテの心境はジャンミとの偽装恋愛を通して変化していく。フンドンに"復讐"させるつもりで着飾らせたら、見違えるほど美しくなった彼女を見て心をときめかせ、傷つきながらも決して諦めない"恋愛アスリート"なジャンミに惹かれ始める。

そんな自分に戸惑い、初めての恋愛感情に混乱するギテがチャーミングで、たまらなく魅力的だ。どんな時も相手を真っすぐ見つめるウジンのひたむきな瞳と繊細な感情表現が、ラブコメならではのドタバタ劇とシリアスなロマンスのギャップを絶妙に引き立たせている。

複雑にもつれ合う恋愛模様に加え、韓国のしきたりを踏まえた(特に女性側の)結婚に対する切実な心理も織り込まれ、ラブコメの定番を打ち壊す上質なストーリーが展開する。韓国社会の実情を踏まえた結婚観のリアルさが韓国女性の支持を集めた理由はよく分かるが、ジャンミとギテの母の衝突や、法事の支度を全て押し付けられる嫁のエピソードといった、"嫁姑問題"が根強い日本の女性にも共感できるポイントが多々登場し、心が揺さぶられる。

年齢を重ねていくにつれ演技に深みを増し、活躍の幅を広げ続けるヨン・ウジン。大人の男性ならではの色気も捨て難いが、軽妙洒脱なラブコメで発揮するコミカルな魅力にもまた目を向けてみたい。

文＝酒寄美智子

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