妻夫木聡が若さゆえに暴走する青年を、竹内結子が気高い令嬢を演じた三島由紀夫作品「春の雪」
2023.9.3(日)
妻夫木聡と竹内結子が主演、三島由紀夫の遺作「豊饒の海」の第1部である小説を映画化し、今から18年前に公開されたのが「春の雪」だ。メガホンをとったのは「世界の中心で、愛をさけぶ」や「ナラタージュ」、公開中の「リボルバー・リリー」でお馴染みの行定勲。
まだ日本に華族や爵位があった大正初期を背景に、どうしようもなく惹かれあっていながらも叶うことのない悲恋を描いた本作は、三島作品を忠実に表現したと高い評価を得た。妻夫木が演じているのは、侯爵家の子息・松枝清顕で親友の本多(高岡蒼佑)から「ひねくれ者」と言われている19才。竹内は幼馴染で年下の清顕に一途な想いを寄せる伯爵家の令嬢・綾倉聡子を演じている。自分の気持ちを積極的に伝えても、気高さは少しも崩れない令嬢になりきった竹内、後半で心情が一変する難しい役に挑戦した妻夫木。切ない恋が美しい日本の四季と共に描かれる。
■妻夫木演じる清顕の青くささの暴走が招いたものは?
(C)2005「春の雪」製作委員会
「清様は私のことをどう思っていますか?」と直球で聡子に聞かれても「いや、別に」とそっけなく答えてしまう清顕だったが、「私がもし急にいなくなってしまったら、清様はどうなさる?」という問いかけには初めて動揺した表情を見せる。そこからが清顕の悪夢の始まりだった。浮かぶボートのような棺桶を開けてみると聡子が横たわっていて、蝶がまとわりつく。うなされ、夢日記をつけるようになる清顕だったが、自分の気持ちを受け入れることができないゆえに周囲を巻き込むトラブルメーカーと化す。実直な親友・本多に聡子と付き合うように勧めたり、わざと嫌われるようなことを書いて面白がって聡子宛に投函したと思ったら、聡子の老女の蓼科に手紙を燃やすように連絡したりと青くささの暴走が止まらない。令嬢の聡子にはやがて宮家の殿下(及川光博)との縁談が持ち上がるのだが、"急にいなくなったら"が現実として迫ってくるやいなや、清顕は再び、蓼科を困らせる。身勝手で自意識の高い青年に妻夫木がなりきり、未熟な幼なじみに翻弄されながらも全てを受け入れるような微笑みと憂いのある表情で魅せる竹内から目が離せない。
■大正ロマン漂うシチュエーションやモダンな服装にも注目
(C)2005「春の雪」製作委員会
雪が降った日に馬車の中で2人で交わす初めてのキス、まるでヨーロッパのようなお茶会。本作には大正時代のセレブたちのモダンで優雅なシーンが数々、登場する。と同時に満開の桜や紅葉に染まるお寺など、日本の四季折々の美しさが映像に閉じ込められている。聡子の着物姿や観劇に出かける時の薔薇を帽子にあしらったドレス姿も美しく和洋折衷の世界。
清顕もサスペンダーを愛用し、懐中時計を持っていたりと物語を彩るカルチャーも見逃せない要素となっている。本作で描かれているのは禁断の純愛。誰かを一途に愛するということが危うさ、儚さと背中合わせであることが伝わってくるから、なお切ない。妻夫木の演技は前半とのコントラストが見もの、振り回されても親友を案じ続ける本多の存在も際立ち、苦悩しながらも伯爵家の意向に背いたことの決着を独りでつけていくヒロインを演じる竹内の美しさと強さも胸に刻みつけられる。
文=山本弘子
-

板垣李光人、中村倫也の"声優"としての佇まいに「羨望のまなざしを送っていました」映画『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』インタビュー
提供元:HOMINIS12/1(月) -

吉永小百合に釘付け...監視される中での沈黙の感情表現が光る「日曜劇場『張込み』」
提供元:HOMINIS12/1(月) -

杉咲花主演×今泉力哉監督&脚本のタッグで描く恋模様は、どこにでもある普段着のラブストーリー、水曜ドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」
提供元:HOMINIS12/1(月) -

竹内涼真と横浜流星の共演で池井戸潤の小説を映画化!対照的なバンカーを演じた「アキラとあきら」
提供元:HOMINIS11/30(日) -

高石あかりが少女の衝動性や嫉妬をひりつくような演技で表現!「セフレの品格 決意」
提供元:HOMINIS11/30(日)

