上野樹里らが演じた家族の在り方に感動！父娘の何気ない日常も尊い「監察医 朝顔」シリーズ

2023.9.2(土)

医療漫画の名作を原作にしたヒューマンドラマ「監察医 朝顔」。法医学者と刑事という異色の父娘が遺体の"生きた証"を探す日々を描く物語はシリーズを通して好評を博し、2019年の第1シーズン、続くスペシャル版「監察医 朝顔　特別編～夏の終わり、そして～」の反響を受けて2020年11月からは第2シーズンと新春SPも放送された。さらに、1年半ぶりとなった昨年9月のスペシャルドラマ「監察医 朝顔2022スペシャル」が、続編を心待ちにしていたファンを中心に話題を呼んだことも記憶に新しい。

同シリーズは、興雲大学法医学教室に勤める新米法医学者・万木朝顔とベテラン刑事・万木平が、遺体の謎を解き明かしていく様をサスペンスフルに織りなすと同時に、"生きた証"を見つけ出すことで生きている人たちの心を救っていく姿を描く。二人暮らしの父娘は、母・里子が東日本大震災で被災し行方不明のまま遺体も見つかっていないという悲しみを抱えており、様々な事件を扱いながら互いを想い支え合い、少しずつ前へ進んでいく日々が情感豊かに紡がれた。

第1シーズンで朝顔は父と同じ野毛山署に勤める桑原と結婚し、娘を授かる。続くスペシャル版ではこれまでの物語を振り返ると共に、桑原との出会いも描かれた。最終話の翌年の春を舞台にした第2シーズンは、クール間での全編新撮となる新春SPも併せて、月9ドラマ初の2クール連続での放送。大規模災害にも相対し、体調を崩した父に代わって朝顔自らが母の"生きた証"を探すことになる。

「監察医 朝顔2022スペシャル」では第2シーズンの最終回から1年半後が描かれた。ついに母・里子の遺体の一部と対面を果たし、終わりのない悲しみを平と互いに癒やしながらも、次女が産まれて一層にぎやかな日常を過ごす朝顔。娘2人の育児、そして認知症が進行した平...と、朝顔を取り巻く家族の在り方がフォーカスされた。

主人公の朝顔を演じた上野樹里にとって、2006年の大ヒットドラマ「のだめカンタービレ」以来13年ぶりとなる月9ドラマ主演作となった。当時から変わらぬ、役に憑依するような高い演技力を持つ上野。優秀な技量と豊富な知識を併せ持ち、懸命かつ真摯に遺体に向き合う法医学者を好演した。家族との愛おしい日々を送る一方で、仕事に取り組む真剣な瞳からは揺るぎない信念が感じられるが、その背景には母の最期が未だに分からないという深い悲しみがある。

遺体に真摯に向き合うことは辛く苦しくても、彼女をもまた救っているのかもしれない。娘、母、そして監察医として周りの人々と誠実に関わり、迷い悩み葛藤し成長していくなかで、心の動きが伝わる上野の自然な仕草や表情が印象的だ。きちんと食べて、泣いて笑う。演じるというよりも、朝顔という一人の女性がドラマの中で生きている。

時任三郎が演じた朝顔の父・平は、娘以上に真面目な堅物でずっと捜査畑を歩んできたベテラン刑事。父として仕事相手として朝顔に寄り添う役柄同様、時任の愛情溢れる演技は一人娘の幸せを心から願う父の温もりを感じさせる。時にぶつかることがあっても、その根底には深い愛情と信頼があり、同じ悲しみを抱えている。初共演となった2人だが、互いを想い合う姿は本当の父と娘のようだ。

朝顔の夫・桑原役を風間俊介、娘のつぐみ役を加藤柚凪、母方の祖父・浩之役を柄本明が演じているが、家族団欒のシーンも温かく、シリーズを通して何気ない日常も確かに積み重ねられていった。現実と同じく時を重ねるがゆえに、家庭にも法医学教室にも変化が生まれていく。良いことも悪いことも起きる人生を懸命に生きる登場人物の姿が丁寧に描かれたが、その後も続いているであろう朝顔たちの日々に想いを馳せたくなる。

文＝中川菜都美

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