若かりし頃の南野陽子の可愛らしさと阿部寛の印象的な笑顔が魅力の名作「はいからさんが通る」
2023.8.16(水)
まだ女性が恋も仕事も自由に選べなかった大正時代の東京を舞台に、パワフルなじゃじゃ馬娘・花村紅緒と、その許婚でもある若きイケメン将校・伊集院忍の運命の恋を描く「はいからさんが通る」。昭和50年の原作コミック連載を皮切りに、TVアニメ、実写ドラマ、舞台とさまざまなメディアで愛され続けてきた王道ラブコメディの初実写映画版に主演したのが、当時、圧倒的な人気を誇ったトップアイドル・南野陽子だ。
(C)大和和紀/講談社・東映
「スケバン刑事II」や「アリエスの乙女たち」といった、少女漫画原作の実写ドラマで主役を務め、清楚で可憐なビジュアルで日本中を魅了していた南野。彼女が演じた紅緒は、大きなリボンと袴という、当時の女学生スタイルに身を包みながらも、帰宅直後に大好物のつくねを平らげ、はち切れんばかりのお腹を寝転びながらさするといった、スーパー自由人。一歩間違えれば、ガサツな印象を与えてしまいがちな紅緒のしぐさだが、不思議と無邪気な可愛らしさが漂うのは、南野が持つ気品の成せる技だろう。
(C)大和和紀/講談社・東映
その後、紅緒は行儀見習いで世話になる華族・伊集院家を訪れるも、応答がなかったことから塀を乗り越えるという暴挙に。そこで彼女を待ち受けていたのが、笑い上戸なイケメン将校・伊集院忍少尉だ。「すぐにその気持ち悪い笑い方をやめなさい!」と紅緒に言われてしまうほどにクセの強い笑い声が印象的な少尉を演じているのが、本作で俳優デビューを飾った阿部寛だ。当時は人気ファッション誌のモデルとして活躍していた彼は、白く輝く美しい歯が印象的な笑顔と圧倒的なスタイルの良さで、日本人の父とドイツ人の母を持つ美青年という役柄を、持ち前のビジュアルで体現した。
祖父母の代から決められていた許婚という少尉に対し、反発していたものの、同じ時間を過ごす中で、少しずつ彼に惹かれていく紅緒。酔っ払った紅緒が軍人を相手に大暴れしたことで2人は遠距離の関係となるが、この事件を機に少尉は紅緒へ正式にプロポーズをする。「戻ったら式を挙げましょう。いいですね」と、少尉がいつになく紅緒に強く出るシーンで阿部がみせる真っ直ぐな視線は、誰もが胸をときめかせてしまうはず。そして、その言葉におだやかな微笑みを浮かべながら小さくうなずき、紅緒が少尉に恋をしていることを表現する南野の可愛らしい表情は必見だ。
(C)大和和紀/講談社・東映
少尉からの手紙を赤いリップを塗りながら待っていたりと、すっかり恋する乙女になった紅緒。しかし、少尉が日露戦争でシベリアへと出兵し、帰らぬ人となったことから物語は一変。紅緒は、乙女の黒髪を自らの手で切り落とし、伊集院忍の妻として葬儀に出席するが、そのシーンで南野が披露する、白い喪服とボブカット姿の凜々しさは観る者すべてを魅了してしまうほどの輝きを放っている。それまでのやんちゃなじゃじゃ馬娘だった紅緒とは全く異なる、大人の女性ならではの気品をたたえた表情で、紅緒の覚悟をしっかりと表現した南野に、圧倒的な女優としての才能を感じずにはいられないだろう。
本作の出演以降も、さまざまな作品で演技力を磨き、今も日本のエンタメ界で大活躍中の南野と阿部。若かりし頃の彼らだからこそ表現することのできた、みずみずしい紅緒&少尉の恋の行方を、ぜひその目で確かめてほしい。
文=中村実香
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